2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20710001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小松 大祐 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 博士研究員 (70422011)
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Keywords | 酸素同位体異常 / 三酸素同位体 / 物質循環 / 亜酸化窒素 / 海洋化学 / 一酸化二窒素 |
Research Abstract |
本研究では、亜酸化窒素(N_2O)の高感度三酸素同位体(Δ^<17>O)定量法を各発生源のN_2Oについて応用し、大気N_2OのΔ^<17>O異常の原因を解明することを目的としている。 主な発生源の海洋について、これまでほとんどN_2Oを放出していないと考えられていた北極海・ベーリング海の陸棚域において堆積物中の脱窒反応によってN_2Oが発生し年間0.097±0.065TgNが大気に放出されていることがわかった。これは全海洋のN_2O放出の0.6-10%に相当し、東シナ海などの他の陸棚域が広がる海域においても同様の現象が起きている場合、陸棚域は相当量のN_2O放出に寄与する可能性が示唆された。一方、本海域の溶存N_2OのΔ^<17>Oを定量した結果、+0.4~+1.9‰であり大気N_2OのΔ^<17>O値を大きく超える値は得られなかった。つまり陸棚域の堆積物中の脱窒反応において発生するN_2Oは大気N_2OのΔ^<17>O異常の原因である可能性が低いことがわかった。 また森林生態系から放出されるN_2Oについて、典型的な温帯林と考えられる京都大学の桐生水文試験地において地下水中の硝酸およびN_2Oについて濃度と窒素・酸素同位体比(δ^<15>N,δ^<18>O)およびΔ^<17>O組成を定量しN_2Oの起源について検討した。硝酸は井戸を用いて地下水を深度別に、N_2Oは地下水の湧水場所においてチャンバー法を用いて気体を分取し、その経時変化を調べた。地下水中の硝酸のΔ^<17>Oは+0.9~+2.4‰であり大気由来硝酸が2-8%程度寄与していることがわかった。一方、発生するN_2Oの値はδ^<15>N=-38±5‰、δ^<18>O=+38±4‰、Δ^<17>O=+0±0.8‰であり、発生するN_2Oのほとんどは硝化反応由来であること、また大気N_2OのΔ^<17>O異常の原因である可能性が低いことがわかった。
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