2010 Fiscal Year Annual Research Report
微細鉱物による土壌有機物の蓄積と分解の制御-土壌炭素の温暖化応答
Project/Area Number |
20710005
|
Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
和穎 朗太 独立行政法人農業環境技術研究所, 物質循環研究領域, 任期付き研究員 (80456748)
|
Keywords | 土壌圏現象 / 自然現象観測予測 / 表面界面物性 / 土壌学 / 二酸化炭素排出削減 / 土壌炭素安定化 / 分解抑制 |
Research Abstract |
最終年度は、初年度から継続して行ってきた以下の2つの研究のまとめを行った。(1)微細鉱物粒子との結合により安定化した土壌有機物の定量的評価:溶解度の異なる土壌鉱物を選択する手法は以前から存在するが、溶解試薬は炭素を含むため、それらの鉱物と結合する有機物の量的情報はほとんど存在しない。そこで私は、土壌有機物中の炭素と窒素の存在比は狭い範囲に収束することに注目し、鉱物の選択溶解に伴い可溶化する窒素を定量化する手法を開発した。この手法を用いて主要な土壌タイプを調べたところ、ポドゾルと火山灰土壌では全窒素量の最大7割、そのほかの熱帯強風化土壌や沖積土では3割程度が、微細鉱物粒子(鉄/アルミニウム酸化物や非晶質鉱物)と結合して安定化していることを初めて明らかにした。 (2)鉱物との結合度の異なる土壌有機物の温度応答性を支配する因子の解明:微細鉱物との結合により安定化している有機物量が段階的に異なる一連の土壌試料(火山灰土壌)を用いて、鉱物による安定化が土壌有機物の分解速度とその温度応答性に及ぼす影響を実験的に評価した。難分解な有機物であるほど分解に要する活性化エネルギーが大きいため、分解速度の温度依存性は高い(アレニウスの法則に従う)という理論的研究があるものの、大半の有機物が鉱物によって安定化されている実際の土壌において、この仮説の詳細の検証はなされていなかった。本研究では、土壌炭素のうちの鉱物と結合していない低比重画分の炭素構造を核磁気共鳴法から直接的に評価することで、微生物がアクセスし易い土壌画分中の炭素の難分解性が、土壌有機物分解の温度依存性を支配することを突き止めた。試料数は少ないものの、ここで得られた知見は、陸域最大の炭素プールである土壌炭素の温暖化応答を予測するために必須の基礎情報になるだろう。尚、(1)はトップクラスの国際学術誌で査読中であり、(2)については投稿準備中である。
|
Research Products
(4 results)