2009 Fiscal Year Annual Research Report
単一粒子リアルタイム分析法による大気エアロゾルの輸送・変質過程の解明
Project/Area Number |
20710006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
薮下 彰啓 Kyoto University, 工学研究科, 助教 (70371151)
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Keywords | 環境動態解析 / 環境計測 / 越境大気汚染 / エアロゾル / 浮遊粒子状物質 / 装置開発 / 都市大気 / 微小粒子状物質 |
Research Abstract |
研究の目的は、大気エアロゾルの動態機構(発生源、移動経路など)や変質過程を明らかにし、効果的な環対策を講じるための基礎データを蓄積する事である。本年度の課題は、日本における大陸からの粒子状汚染物質の長距離輸送に関する研究を行う事と、都市大気汚染のエアロゾル化学成分に対する影響評価について研究する事である。そのため、前者の課題に対しては春季に長崎県福江島の福江島大気環境観測施設において、後者の課題に対しては夏季に東京都文京区本郷にある東京大学で地上観測を行った。 東アジア地域で発生した大気汚染物質は冬季から春季にかけて、季節風により中国大陸から東シナ海沿岸域に輸送される。そこで、人体の健康に影響があると考えられる金属成分などを含む粒子状物質を研究対象として、平成22年3月より東シナ海沿岸に位置する福江島において地上観測を実施している。解析は来年度の課題である。 硝酸塩は都市域におけるエアロゾルの主要な成分の一つであり、エアロゾル中の硝酸塩の生成は大気中のNO_xの重要な消失過程の一つである。エアロゾル中の硝酸塩の生成過程を調べるため、東京大学において2008年7月31日から8月23日まで観測したデータを解析した。30,976個の個別粒子の負イオンスペクトルが得られ、70%以上の負イオンスペクトルに硝酸塩が含まれていた。観測期間中ほとんどは、エアロゾル中の硝酸塩の信号強度と相対湿度の挙動がよく似ており、日中にはOHラジカルによるNO_2の酸化反応によって生成したHNO_3がエアロゾルに取り込まれ、夜間はN_2O_5のエアロゾル表面での水和反応がエアロゾル中の硝酸塩の主要な生成過程となっていたと考えられる。挙動が一致していない期間には海塩粒子が増加しており、海塩粒子とHNO_3が反応した事が原因であると考えられる。2009年夏季にも同様の観測を行い、その解析は来年度の課題である。
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