2009 Fiscal Year Annual Research Report
成層圏突然昇温現象が熱帯対流圏に及ぼす影響評価-対流励起と成層圏対流圏交換過程-
Project/Area Number |
20710014
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
江口 菜穂 National Institute for Environmental Studies, 地球環境研究センター, NIESポスドクフェロー (50378907)
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Keywords | 気候変動 / 気象学 / 成層圏突然昇温 / 熱帯大気 / 雲 |
Research Abstract |
研究目的に沿い、以下の2つの研究項目を実施した。 1. 2007年南半球成層圏突然昇温(SSW)の熱帯域雲活動への影響:2007年南半球SSW発生時の熱帯対流圏界面遷移層(Tropical Tropopause Layer ; TTL)内の雲、水蒸気変動を、高鉛直分解能衛星観測データセットを用いて調べた。その結果、熱帯域の主要な対流活発域(アフリカ、南米、海洋大陸)でSSW前後に絹雲の形成過程に違いがあることがわかった。すなはち、大陸上では、SSW後にTTLに貫入する積雲が発達し、その周辺で絹雲が多く観測された一方、海洋大陸域では、組織的な積雲群が形成され、その潜熱加熱に伴うケルビン応答によってTTL内が低温化し、絹雲が広域に発生していた。またこの領域はアジアモンスーン域からの湿潤空気塊が常に供給され、低温域で絹雲が形成され、それによる脱水によって乾燥空気塊が生成されていることがわかった。 本結果は、2010年3月にGeophysical Research Letterに投稿し査読後、現在(2010年5月中旬)改訂中である。 2. 2009年北半球SSWの熱帯雲活動および成層圏対流圏間物質交換過程(STE)へ与える影響:2009年1月に北半球極域で発生した大昇温による熱帯への影響を調査した。その結果、SSW後に熱帯域の大規模な循環場が東西循環(Walker循環)から南北循環(Hadley循環)へと遷移し、かつ組織だった積雲対流雲システムからより小規模スケールの積雲システムへと移行していた。この積雲対流システムの変移により、TTL内の絹雲及び水蒸気等の微量気体成分分布が変化していた。さらにそれぞれ成層圏、対流圏起源であるオゾン、一酸化炭素の解析より、SSW後にSTEが活発化していたことがわかった。 本成果は、学術誌への投稿準備中である。 上述の成果を国際学会等で発表し、ホームページ上で公表している。
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Research Products
(12 results)