2009 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析を用いた海水中の難分解性多環式化合物定量法開発
Project/Area Number |
20710017
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
本郷 やよい The Institute of Physical and Chemical Research, 物質構造解析チーム, 技師(研究職) (40435681)
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Keywords | LC-ESI-MS / 葉酸 / 溶存態有機物 / 光分解 / HILIC |
Research Abstract |
本年度は、海水試料中の葉酸定量法を確立するとともに、その方法を用いて実試料分析を行った。海水中の高濃度の塩を逆相系固相抽出で取り除き、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)とネガティブモードエレクトロスプレーイオン化法を組み合わせた質量分析法(LC-ESI-MS}で分析条件を最適化した。海水中の難分解溶存態有機物の生成過程を調べるために、まず既知化合物が海水中で受ける僅かな変化を分子レベルで捉える手法が必要である。本分析法は葉酸を分子特異的に検出でき、従来のボルタンメトリー法では不可能だった分子レベルの変化を捉えることが出来る。実験では葉酸が海水中で消失する消失速度とその主要因を調べた。高知沖深度1000mで採取したろ過海水と、海洋由来微生物を含まない対照バッファー溶液それぞれに葉酸30nmol/mlを添加し、明条件と暗条件下で常温培養し、経時的に濃度を測定した。結果、葉酸はいずれの培養条件下でも7日間でその大半が消失することを確認した。さらに、培養3日目までの葉酸減少速度は光照射した海水において最も早かったものの、暗条件下バッファー溶液でも葉酸減少を確認したことから、葉酸は新規供給直後に自然分解で減少しうると考えられた。また、7日後には明条件下は培養液に因らず定量下限1.8nmol/mlを下回ったのに対し、暗条件の試料では4nmol/ml以上残留した。これらの結果は生物要因よりも光・熱分解が海水中の葉酸濃度減少に重要であることを示す。また、培養中期には新たに葉酸光分解物と報告されているp-aminobenzoylglutamic acidを検出した。培養実験では極微量生成する反応物を系の拡大によって増量し、質量分析以外の分子構造解析手法を適用することも可能である。本結果は海水中の溶存有機化合物消失について、生物分解と熱・光分解の寄与を比較した初めての例となる。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Rare earth elements in seawater during an iron-induced phytop Iankton bloom of the western subarctic Pacific(SEEDS-II)2009
Author(s)
Hara, Yasuko, Obata, Hajime, Doi, Takashi, Hongo, Yayoi, Gamo, Toshitaka, Takeda, Shigenobu, Tsuda, Atsushi.
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Journal Title
Deep-Sea Research, Part II : Topical Studies in Oceanography 56
Pages: 2839-2851
Peer Reviewed
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[Journal Article] Synthesis of All Possible Isomers Corresponding to the Proposed Structure of Montanacin E, and Their Antitumor Activity2009
Author(s)
Takahashi, Shunya, Takahashi, Ryotaro, Hongo, Yayoi, Koshino, Hiroyuki, Yamaguchi, Kazunori, Miyagi, Taeko
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Journal Title
Journal of Organic Chemistry 74
Pages: 6382-6385
Peer Reviewed
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