2010 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析を用いた海水中の難分解性多環式化合物定量法開発
Project/Area Number |
20710017
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
本郷 やよい 独立行政法人理化学研究所, 物質構造解析チーム, 技師 (40435681)
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Keywords | LC-ESI-MS / 葉酸 / 溶存態有機物 / 光分解 / HILIC / p-aminobenzoly-L-glutamic acid |
Research Abstract |
本年度は、本課題で新たに開発したHILICカラムを用いたLC-ESI-MS法による海水マトリックス中の葉酸定量法を利用し、葉酸の定量とあわせ海水培養系内に新たに発生した化合物の探索を行った。その結果、葉酸添加後48時間以降の試料中に新たに生じた化合物を検出し、^1H,^<13>C-NMR、MS/MS法による構造解析、標準化合物とのスペクトル比較を経てp-aminobenzoly-L-giutamic acid(PAG)であることを確認した。従来、海水中の葉酸は主として光分解および生物分解により速やかに消失すると考えられてきた。本研究においても葉酸消失速度定数Kは暗条件下(0.007-0.008)に対し、明条件下(0.017-0.0018)と、光照射による葉酸の消失促進が確認された。しかし、7日間の培養実験では、質量分析法を用いた半定量実験により暗条件下のコントロールバッファーにおいても67%の葉酸がPAGに変化したことを明らかにした。この結果は、海水中の葉酸の消失速度は水溶液中での化合物安定性自体に依存し、生物環境、光環境を必ずしも反映しない可能性を強く示唆し、光分解・生分解が中心に議論されている海洋溶存有機化合物の分布に化合物ごとの化学性の要素を考慮する必要があることを実験により証明した。既知化合物を添加した培養海水を用いて、化合物の変化と消失プロセスを明らかにできた事で、本手法が実際の海水中の難分解性化合物生成プロセスを研究する手段として有効であることを示した。
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