2008 Fiscal Year Annual Research Report
大気中のグリオキサール濃度の立体分布解明:新しい遠隔測定インバージョン法の開発
Project/Area Number |
20710021
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
入江 仁士 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 地球環境フロンティア研究センター, 研究員 (40392956)
|
Keywords | 環境計測 / グリオキサール / MAX-DOAS / インバージョン |
Research Abstract |
本課題は、アジア域における広域大気汚染問題に関わりが深い大気中のグリオキサール(CHOCHO)濃度の立体分布(高度・緯度・経度)を観測データ(地上および衛星観測データ)から初めて明らかにするものである。課題代表者は2005〜2007年のあいだ、日本および中国の複数地点でMAX-DOAS法を用いて地上から分光観測を実施し、膨大なスペクトルデータを取得した。当該年度では、このデータを再利用する形でCHOCHOの高度分布を導出する新たなインバージョン法を開発した。具体的には、グリオキサール吸収帯をカバーする適切な解析波長範囲(425-465nm)を選定し、差分吸収解析(DOAS解析)を高精度化させた。また、その波長範囲において放射伝達モデルによるエアマスファクターの計算を実施し、それをロジャース最適法と組み合わせて、CHOCHOのインバージョンアルゴリズムを完成させた。このインバージョン法を2007年9月に北京市で得られたMAX-DOASのスペクトルデータに適用させたところ、地表付近(高度O-1kmの平均)の濃度が日中に500pptまで達するイベントが見出された。カラム濃度としては1×10^<15>molecules cm^<-2>に相当することが分かった。また、沖縄・辺戸岬のデータについても解析したところ、正午ごろにピークとなる明瞭な日変化、および、夏季に極大となる季節変化が観測された。地表付近では濃度が200pptまで達することがあった。トラジェクトリー解析等から、CHOCHOのソースとなる有機物の起源が海洋にあることが示唆された。
|