2008 Fiscal Year Annual Research Report
トキの餌場環境の復元へ向けた水田管理方法の生態学的評価
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20710023
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
武山 智博 Niigata University, 大学院・自然科学研究科, 科学技術振興研究員 (70452266)
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Keywords | 生態系修復・整備 / 生態系影響評価 / 水田生態系 / 生物多様性 / 安定同位体比分析 / トキNipponia nippon |
Research Abstract |
トキの採餌環境の創出と維持に有効だと考えられる、二通りの水田の「通年湛水」の管理方法が、水生生物の種多様性や現存量、生態系(食物網)構造に与える効果を、景観要因として「立地環境」(森林からの距離として2区分した里山と平場)の違いも考慮に入れて評価した。2007年早春、新潟県佐渡島の小佐渡東部地域の複数の水田において、稲作水田では「江(え)」とよばれる水田内の小土水路を、休耕田では「通年湛水」を実験的な通年湛水処理区としてそれぞれ創出した。農事暦にあわせ、2008年3月(田植え前)・6月(田植え後)・9月(稲刈り直前)・12月(稲刈り後)に調査を行った。江や湛水休耕田の創出による水生昆虫の量や種数の増加は、里山・平場の両環境において認められたが、里山ではコウチュウ目とトンボ目が増えたのに対し、平場ではコウチュウ目のみが増えた。この違いは、里山の林縁部の水辺を選好するトンボ目の出現に起因し、生物多様性に対する湛水処置の効果は里山の方がより高いと考えられた。また、トキの主要な餌生物と推測される魚類量(主にドジョウ)と水生昆虫量(体長1cm以上)は、江および湛水休耕田の創出により、里山・平場の両環境で増加する傾向がみられた。水田・江・湛水休耕田ともに湛水状態にある、2008年6月の生態系の構造を、炭素・窒素の安定同位体比分析を用いた食物網解析により評価した。その結果、水田の食物網構造は、水中の懸濁態有機物(植物プランクトンを含む)と表泥に堆積した有機物が一次生産者(物)であり、魚類が最高次の消費者であるという構造であった。この食物網の構造は、立地環境にはよらず、江と湛水休耕田の両方の湛水方法で共通して見られたことから、これらの湛水方法によって創出された生態系は水田内と同様の構造であることが示唆された。
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Research Products
(6 results)