2008 Fiscal Year Annual Research Report
流域の仮想集水域指標の開発と環境コミュニケーション機能の分析
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20710033
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
後藤 忍 Fukushima University, 共生システム理工学類, 准教授 (70334000)
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Keywords | 仮想集水域指標 / 流域 / 環境指標 / 環境コミュニケーション / ウォーター・フットプリント / ヴァーチャル・ウォーター |
Research Abstract |
本年度は, 研究計画にのっとって,1) 具体的な流域を対象とした仮想集水域の推計と、2) 世界における指標の開発動向に関する情報収集を行った。 1) については, 福島県の阿武隈川流域において, 域外からの取水を行っている点で特徴的な「安積疏水」の関連流域を取り上げ, 水資源へのインパクトを総合的に表す仮想集水域指標を適用した。水資源賦存量と仮想水使用量を推計した結果, 安積疏水関連流域における水使用量のインパクトは水資源賦存量を上回っており, 約2.3倍の仮想集水域から水を使っている状況と評価された。また, 猪苗代湖から取水している量は, 水道用水の52%, 農業用水の47%に相当していること, 米の消費量の観点からは, 安積疏水によって流域内の人口とほぼ同じ人口を別の地域で支えるだけの稲作が可能となっていること, などの特徴が明らかとなった。このような特徴は, 仮想集水域指標の考え方によって明示的に示されるものであり, 従来の水に関する環境指標では表現できないものである。疏水による域外からの取水は, 歴史的な偉業として位置づけられることが多いが, 環境的には他地域への依存度を増すことになるものであり, その依存状況を表すことができる点で, 仮想集水域指標は意義があると考えている。 2) については、イギリスで開催された, ウォーター・フットプリントをメインテーマとした初めての国際会議である「ウォーター・フットプリント・サミット(Water Footprint Summit)2008」に参加し, 推計の枠組みや事例について最新の動向を把握した。この指標は, 仮想集水域指標を着想するヒントの一つとなった指標であるが,(踏みつけ面積(footprint)という名前にも関わらず)単位が「水量」であり, 水質についても明示的に計上されないという点で, 仮想集水域指標とは異なる。その違いや長所・短所等の特徴について, 新たな知見を得た。
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Research Products
(1 results)