2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20710040
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
堀 正和 Fisheries Research Agency, 瀬戸内海区水産研究所生・産環境部, 研究員 (50443370)
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Keywords | 生態系機能 / 生態系サービス / 生物多様性 / 持続可能性 / アマモ場 / 沿岸域 / 保全再生 / 環境経済 |
Research Abstract |
近年の劣化が激しい海草藻場は重要な生態系サービスを有するため,その機能を回復させるための保全再生事業が盛んに行われている.しかしながら回復すべき機能とサービスを生態学的観点から評価する手法は確立していないため,事業等の成否は判断できていない.本研究は海域単位の生態系機能とサービスの試算手法を確立することを目的としている.研究初年度は,海草藻場の生態系機能として,(1)海草類の一次生産量と現存量,(2)光合成ガス交換率,(3)海草藻場の堆積作用,(4)藻場面積・分布範囲,(5)藻場内の生物群集の5項目を評価する野外調査と実験を行い,これらのデータと過去の知見を比較した.(1)及び(2)で得られた測定値は過去の知見に見られる温帯域アマモの一般的成長量・ガス交換率の偏差内に収まった.また(3)においては実験藻場を作り,操作に伴う流速と堆積物量の変化を計測する予定であったが,測定機器不足により現在も実験・測定を継続中である.(4)では,衛星画像および音響探査画像から地理情報システムを用いて藻場の抽出を試みた結果,空間分布と個々の藻場の面積を算出することが可能になった.(5)では,アマモ群落内の葉上動物群集及び魚類相の群集構造および生産量を測定し,さらにメソコスムを用いて単位面積あたりのメバル類の年間生産量の測定実験を行った結果,高次生産量は過去の知見とは全く異なる値を示した.これらの結果は,海草藻場の単位面積あたりの一次生産量・高次生産量の試算に加え,海草藻場の空間分布と面積を広域に捉えることが可能になったことを意味する.したがって海草藻場の生態系機能の定量的評価を海域単位で評価できるため,次年度以降に生態系サービスまで評価する手法に発展させることで,沿岸域の自然再生や保全修復策に海草藻場の経済的効果を組み込むませることが期待できる.
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