2010 Fiscal Year Annual Research Report
クラスターDNA損傷によるテロメア不安定性誘発に関する研究
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20710045
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
漆原 あゆみ 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究員 (80391275)
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Keywords | クラスター損傷 / テロメア / 遺伝的不安定性 / 紫外線 / 酸化損傷 / 放射線 |
Research Abstract |
電離放射線により引き起こされる様々な影響の中でも、放射線発がんにつながると考えられている遺伝的不安定性の原因因子を特定する事は、放射線の生物影響を明らかにするだけでなく発がん過程を解明する上でも重要である。本研究は、遺伝的不安定性の誘発原因を明らかにするため、電離放射線によって生じるDNA損傷の中でも非DSB型のクラスター損傷に着目し、その遺伝的影響について、染色体異常を指標とした解析を行った。 平成22年度の研究では、平成20年度及び21年度に樹立したUVA照射ヒト21番染色体移入細胞について、ヒト21番染色体特異的なプローブを用いた蛍光染色を行い、移入したヒト染色体における染色体異常誘発頻度、及びレシピエント細胞の倍数性と染色体異常生成頻度について調べた。コントロールには、非照射ヒト21番染色体移入細胞を用いた。その結果、UVA照射ヒト21番染色体の移入によって、2倍体であったレシピエント細胞は4倍体、あるいは8倍体へと多倍数体化し、非照射染色体の移入では見られなかった染色体数のばらつきも顕著に見られた。また、UVA照射されたヒト染色体だけでなく、非照射の染色体であるレシピエント細胞由来の染色体においても染色体異常の増加が見られたことは、UVA照射によって生じた損傷の移入が、レシピエント細胞そのものを不安定化させることを示すものである。UVAによって生じるDNA損傷は、DSBよりも酸化損傷からなる非DSB型損傷が主であると考え、代表的な酸化型損傷である8-oxoGを蛍光免疫染色法によって調べた結果、UVA照射によって染色体上における8-oxoGが増加していた。UVA照射染色体の移入により引き起こされる遺伝的不安定性は、これまで言われていたDSB型損傷による遺伝的不安定性誘発機構とは異なり、8-oxoG等からなる非DSB型の損傷の関与を示唆するものである。
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