2008 Fiscal Year Annual Research Report
重イオン照射によるDNA局所損傷メカニズムの解明に関わる研究開発
Project/Area Number |
20710047
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
横田 裕一郎 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 任期付研究員 (30391288)
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Keywords | 重イオンビーム / DNA損傷 / ヒト正常線維芽細胞 / 細胞致死効果 |
Research Abstract |
重イオンビームはガンマ線などの光子線と比べて、生物効果が大きいことが知られている。そのメカニズムとして、重イオンビームは細胞内に局所的で複雑なDNA損傷を誘発すると予想されているが、実験的には証明されていない。本研究では、重イオンビームが照射細胞内に誘発するDNA局所損傷を定量的に解析するための実験法を開発するとともに、重イオンビームの生物作用の初期過程を解き明かす。平成20年度は、研究に用いる培養細胞の選定と培養条件の確認、重イオンビームの細胞致死効果の解析を行った。 1.培養細胞の選定と培養条件の確認 研究の展開次第で、照射後のDNA修復過程を調べることが想定されるため、放射線応答に関わる遺伝子群が正常に機能しているヒト正常線維芽細胞を実験に用いた。さらに、正常細胞は細胞分裂に伴って老化し、放射線応答が変化してしまうことが考えられるため、テロメア逆転写酵素を高発現させた細胞株を選んだ。選定した細胞が、一般的な細胞培養条件(10%ウシ胎児血清を含む培地、37℃、5%CO_2)で半年以上継代培養できることを確認した。 2.重イオンビームの細胞致死効果の解析 重イオンビーム(陽子、ヘリウム、炭素、ネオンおよびアルゴンイオン)と対照として^<60>Coガンマ線を照射した細胞のコロニ-形成能を調べた。重イオンビームの細胞致死効果は放射線の線エネルギー付与に依存した。照射細胞の生存率を非照射細胞の1/10に低下させる線量(10%生存線量)は、カンマ線では4.3 Gyであったのに対して、線エネルギー付与が70および110 keV/μmの炭素イオンではI Gyであった。このことは、線量あたりの細胞致死効果は、炭素線ではカンマ線に比べて4倍以上大きいことを意味する。 平成21年度は、重イオンビームが細胞内に誘発する局所DNA損傷を定量的に解析するための実験法の開発を進める予定である。
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Research Products
(5 results)