2010 Fiscal Year Annual Research Report
重イオン照射によるDNA局所損傷メカニズムの解明に関わる研究開発
Project/Area Number |
20710047
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
横田 裕一郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (30391288)
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Keywords | 重イオンビーム / DNA2本鎖切断 / LET / 限外ろ過 / 電離放射線 |
Research Abstract |
線エネルギー付与(LET)が高い重イオンビームは、低LETのガンマ線などの光子線と比べて、生物効果が大きいことが知られている。そのメカニズムとして、重イオンビームは、細胞内に局所的で複雑なDNA損傷を誘発することが予想されているが、このことは実験的に証明されていない。そこで本研究は、重イオンビームが照射されたヒト培養細胞内に誘発されるDNA局所損傷を定量的に解析するための実験法を開発するとともに、重イオンビームの生物作用の初期過程を解き明かすことを目的とした。 放射線誘発DNA2本鎖切断の定量研究では、放射線照射後に細胞内に生じたDNA断片の長さと本数をパルスフィールドゲル電気泳動法で解析することにより、DNA2本鎖切断が誘発された間隔とその頻度を明らかにする。従来研究では、細胞からゲノムDNAを取り出す段階での人為的なDNA鎖切断を抑制するため、照射細胞をアガロース小片に包埋した状態で、最長48時間程度のタンパク質分解・洗浄処理を行った。本研究では、従来法に従ってゲノムDNA抽出を行った場合、分解されたタンパク質のみならず、短い(概ね10キロ塩基対以下の)DNA断片までもがアガロース小片から流出し、失われてしまう新事実を見出した。これは、従来研究において10キロ塩基対以内に複数個生じるようなDNA2本鎖切断の定量が極めて困難であったことの主な原因であると考えられる。さらに、ある種の限外ろ過フィルターを用いてDNA溶液を遠心分離することにより、50塩基対より長いDNA断片のほぼ全量を濃縮する実験条件の確立にも成功した。 今後は、人為的なDNA鎖切断を抑制することができる従来のゲノムDNA抽出法と限外ろ過フィルターを用いたDNA溶液濃縮技術を組合せることで、照射細胞内に生じる全てのDNA断片を対象にした定量解析実験を行うことにより、重イオンビームに特徴的なDNA局所損傷を調べる。
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Research Products
(3 results)