2010 Fiscal Year Annual Research Report
イオン飛行時間分析法を用いたクラスターDNA損傷の直接観測
Project/Area Number |
20710048
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
藤井 健太郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (00360404)
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Keywords | 電離放射線 / DNA / クラスター損傷 / 放射光 / 軟X線 / イオン |
Research Abstract |
本研究は、単一の電離放射線によって、どのようなクラスターDNA損傷が生成するのか、またその生成過程についての知見を得るために、単色軟X線によってDNA分子中に同時に二個以上生成するイオンの生成時間とイオン種の相関について調べることが目的である。本年度は放射光ビームラインで今後使用するための、飛行時間型イオン質量分析器をオフラインにおける整備を行い、電子線照射により発生する表面脱離イオン観測のための各実験装置を整備した。低エネルギー電子線として、100-1500eVのエネルギーを持つ電子線をDNA薄膜資料に照射し、照射により発生するイオンを本課題により整備した、飛行時間型イオン質量分析器により質量を選別して検出する。また、DNA薄膜への電子線照射実験を行い、いくつかのエネルギーにおける鎖切断と塩基損傷の収率を求める実験を行った。低エネルギー電子線の飛程が非常に短い(数十nm)ため、実験条件の最適化にはまだ多少時間を要するが概ね実験が終了した。またマルチチャンネルスケーラーやパルス電源の整備を行い、飛行時間測定に向けた実験装置および測定装置の準備が概ね終了した。さらに放射光施設において、DNA薄膜に対する軟X線照射実験を行い、照射によるX線吸収端近傍微細スペクトルの変化を測定し、塩基のプリンあるいはピリミジン環の分解や糖部位の分解に由来したX線吸収スペクトルの変化を観測した。また、内殻共鳴励起による各種DNA損傷の定量を行った結果、酸素K殻共鳴励起では、鎖切断の選択的な誘発が観測された。今度はクラスターDNA損傷の生成と、これらの鎖切断や塩基損傷の誘発との関わりを本課題で整備した装置により観測する予定である。
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Research Products
(15 results)