2008 Fiscal Year Annual Research Report
複合的解析に基づくタンパク質の放射線損傷メカニズムの解明
Project/Area Number |
20710050
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
清水 伸隆 Japan Synchrotron Radiation Research Institute, 利用研究促進部門・結晶構造解析チーム, 研究員 (20450934)
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Keywords | 放射線損傷 / タンパク質 / タンパク質結晶 / X線結晶解析 / 紫外可視分光法 / 放射光 / SPring-8 / 顕微分光装置 |
Research Abstract |
本研究ではタンパク質結晶の放射線損傷メカニズムを明らかにするために、SPring-8の高輝度放射光を利用したX線回折測定と紫外・可視光の吸収スペクトル測定を交互に繰り返して実行する必要がある。しかし、分光光度計の測定スピードが遅いため、実験効率に大きな問題があった。そこで、この分光光度計の測定制御系の高度化を実施した。その結果、これまでは500から250nmまでの波長スキャン測定に約7分を要していたが、それを35秒で実施可能となった。そこで、グルコースイソメラーゼの結晶を使用して、「吸収スペクトル測定→X線回折測定→吸収スペクトル測定」という繰り返しの測定を実施した。X線の照射条件は1測定当り7MGyの吸収線量で3回繰り返すとヘンダーソン限界(20MGy)を超えるように設定した。1回目のX線回折測定前後の吸収スペクトルを比較した所、300nmと250nm付近の吸光度が増大し、2回目、3回目と繰り返すと303nmと251nmにそれぞれピークを持つようになった。303nmの変化量を比較するとこ1回目の時点で0..50Dの変化を観測し、それ以降では約0.20Dずつの一定量の変化となっていた。これは、放射線損傷に伴う初期の変化が主に7MGyまでの間で発生する事を示唆していた。一方、この時点での電子密度図では、タンパク質分子表面に位置する11個の酸性残基(グルタミン酸、アスパラギン酸)のカルボキシル基において、差の電子密度が負の値となっていた。これは、放射線損傷によってカルボキシル基が消失しつつある事を示唆していた。現在、電子密度図の変化をさらに詳細に検討中であり、吸光度変化に対応する電子密度変化を解析中である。また、250nm付近で観測された吸光度の増大は本研究で初めて捕らえた変化であり、この変化に対応する反応に関しても現在検討中である。
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