2009 Fiscal Year Annual Research Report
複合的解析に基づくタンパク質の放射線損傷メカニズムの解明
Project/Area Number |
20710050
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
清水 伸隆 Japan Synchrotron Radiation Research Institute, 利用研究促進部門, 研究員 (20450934)
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Keywords | 放射線損傷 / タンパク質 / タンパク質結晶 / X線結晶解析 / 紫外可視分光法 / 放射光 / SPring-8 / 顕微分光装置 |
Research Abstract |
タンパク質結晶の放射線損傷メカニズムを明らかにする為に、SPring-8の高輝度放射光を利用した精密X線結晶構造解析と紫外可視分光法を組み合わせて、多面的に解析する事を目指している。Mn含有タンパク質グルコースイソメラーゼ結晶に1.0×10^<-4>MGyから徐々に線量を増加させて吸収スペクトル変化を観測した所、3.4×10^<-3>MGyの吸収線量となった段階で250nmと310nm付近の吸光度が増加する変化が観測された。最終的に60MGyまで与えた所、252nmと305nmの吸光度が増加し、279nmの吸光度が減少した。290nmに等吸収点が見られる為、279nm付近に吸収を持つ電子状態が252nmもしくは305nmにシフトしたと推測される。279nmの吸収はトリプトファンもしくはチロシン残基に起因するため、タンパク質中の両残基の電子状態が変化したことを示差していた。一方、X線結晶構造解析によって求められた電子密度を比較した所、吸収線量が増加すると放射線損傷により得られるデータの分解能や統計精度が明確に劣化していたものの、全てのトリプトファンとチロシン残基において吸収スペクトル変化に直結するような変化は観測されなかった。しかしながら、Mn結合サイトでは吸収線量増加に伴いプラスやマイナスの電荷が激しく生成している様子が観測されている。現在この変化と吸収スペクトル変化の関係性を検証している。次に、結晶を100Kで測定する為に必要な抗凍結剤を2-メチル-2, 4-ペンタンジオールからグリセロールに変更した所、吸収スペクトル変化量が約3.0倍増加し、放射線損傷が激しくなった。これまで放射線損傷に対する抗凍結条件依存性を示差する報告は少ないが、本研究ではその効果を吸収スペクトル変化として補足することに成功した。
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Research Products
(1 results)