2008 Fiscal Year Annual Research Report
機能性バイオ素材を用いたセルラーゼの分離回収およびリサイクル利用
Project/Area Number |
20710059
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
野中 寛 Mie University, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (90422881)
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Keywords | Cellulase / Recovery / Reuse / Lignophenol / Lignin / Adsorption / Saccharification / Bioethanol |
Research Abstract |
セルロース系バイオマスの糖化に用いられるセルロース加水分解酵素・セルラーゼは、回収されることなく使い捨てにされている。ここ数年の酵素の低価格化によりセルロースの糖化、発酵によるエタノール生産プロセスが現実味を帯びる一方、依然としてセルラーゼ価格がエタノール価格に占める割合は大きい。急速なエタノール生産量増加とともにセルラーゼの供給逼迫は必死であることから、セルラーゼのリサイクル技術の早期確立が重要である。本研究では、リグノセルロース系原料を酵素糖化する際、一部のセルラーゼがリグニンに吸着することに着目し、構造や官能基が制御できるリグニン由来の機能性バイオ素材「リグノフェノール」を吸着素材として用いて、セルラーゼの分離回収およびリサイクル利用するプロセスの開発を目的としている。本年度は、針葉樹であるヒノキ心材部木粉から、p-クレゾールと72%濃硫酸を用いて、標準リグノフェノールを合成し、Trichoderma reesei由来のセルラーゼ(市販品)の吸着特性を検討した。pH5の酢酸緩衝溶液中において、セルラーゼ吸着量はリグノフェノール1gあたり最大75mgであり、10分後にはすでに飽和吸着量に達していた。この最大吸着量をもとに、液中のセルラーゼを全量吸着するためのリグノフェノールを用いたところ、液中に残存するセルラーゼ活性は消失し、完全かつ迅速なセルラーゼの回収が実現可能であることが明らかとなった。最大吸着量を示したpHは5であり、pH上昇とともに吸着量は減少し、pH12の液中では吸着現象が認められなかった。このpH依存性は、吸着セルラーゼの脱離、再利用に対して十分な示唆を与える知見である。
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