2009 Fiscal Year Annual Research Report
量子ビーム制御による生分解性ナノハイブリッド材料の創製
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20710067
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
長澤 尚胤 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (00370437)
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Keywords | 量子ビーム / 環境材料 / ナノ微粒子 / 多糖類 / 橋かけ(架橋) / バイオマス / 生分解性プラスチック / 複合材料・物性 |
Research Abstract |
放射線照射でゲル化するカルボキシメチルセルロース(CMC)やカルボキシメチルキトサン(CMCT)の橋かけ点部位やCMCについて照射時の温度変化等による粘弾性変化について、二酸化ケイ素をナノ微粒子の基準物質としたポリ乳酸ナノハイブリッド材料の熱物性変化について検討した。CMC、 CMCTと水の放射線分解で生成するOHラジカルとの反応で生じる高分子マクロラジカルについて電子スピン共鳴(ESR)法を用いて、ラジカル同定並びにラジカル減衰挙動から橋かけ点部位を検討した。その結果、カルボキシメチル基の第2級炭素上にラジカルが生成することを同定し、このラジカルが橋かけ点の起点になると推測された。照射時の温度によるゲル化挙動について検討するため、未照射の5%CMC溶液の動的粘弾性測定で評価した結果、低温になるほど貯蔵弾性率G'、損失弾性率G"が大きくなり、室温での20%濃度のCMCペースト溶液と同等になることを見いだした。ポリ乳酸ナノハイブリッド材料について、橋かけ反応に有効なトリアリルイソシアヌレート(5%)と二酸化ケイ素(10%)とを混練したポリ乳酸フィルムに電子線を照射し、200℃までの動的粘弾性変化を評価した。50kGy照射して橋かけすることにより、貯蔵弾性率E'の急激な低下が改善できる傾向が得られた。さらに、100℃で1時間熱処理による再結晶化した結果、ガラス転移温度以上の約60℃でもE'に変化が無く、約70℃における急激な弾性率の低下が約1/10程度に抑制できることを見いだした。以上のように、放射線橋かけする多糖類のラジカル部位や温度変化による粘弾性挙動等を明らかにし、更に二酸化ケイ素を添加したポリ乳酸ナノハイブリッド材料を放射線橋かけと再結晶化の後処理を組み合わせて改質することにより、多糖類をはじめとした生分解性高分子の放射線利用拡大に貢献できると考えられる。
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