2009 Fiscal Year Annual Research Report
電子伝導素子に代わるスピン波束伝播型局在スピン素子の理論的研究
Project/Area Number |
20710076
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
古門 聡士 Shizuoka University, 工学部, 准教授 (50377719)
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Keywords | 量子スピン / スピン-原子振動相互作用 / スピンフリップハミルトニアン / スピン軌道相互作用 / スピン-フォノン相互作用 / スピン緩和 / 双安定 / 模型計算 |
Research Abstract |
今年度は,昨年度に引き続き,スピン波束伝播の持続に大きな影響を与え得るスピン緩和に注目し,その起源について理論的研究を行った.ここでスピン波束とは,連なった磁気モーメントの一部が傾いた励起状態であり,伝播の際,電子の移動は伴わない.また,スピン緩和は励起状態から基底状態への遷移を表し,遷移確率が小さいほど波束は存在しやすい.得られた主な結果は次の通りである. 1 スピン緩和の一因と考えられる相互作用"スピン-原子振動相互作用V_<SP>"および"スピンフリップハミルトニアンV_<SF>"の表式を導出した.ここでは簡単のため,結晶場中の単一原子スピン系を考えた.結晶場分裂エネルギーを無摂動項,スピン軌道相互作用H_<SO>および原子振動による結晶場エネルギーの変化ΔV_Cを摂動項として,一次・二次の摂動エネルギー(V_<SA>とV_<SF>に相当)を求めた.なお,H_<SO>とΔV_Cには原子核の微小振動変位と電子のそれの差を考慮に入れた. 2 1で得たV_<SP>とV_<SF>の大きさを,従来のスピン-フォノン相互作用V_<SP>の大きさと比較した.ここでは,スピン軌道相互作用の結合係数の大きさが10meV以上の場合(Feは約12meV)を考えた.原子振動数fが1THz以下では,|V_<SA>の係数|>|V_<SP>の係数|になった.さらに0.01THz<f<100THzのうちのほとんどの領域で|V_<SF>の係数|>|V_<SP>の係数|であった.また,fに関係なく常に|V_<SF>の係数|>|V_<SA>の係数|が確認された. 3 1軸性の異方性エネルギー-|D|S^2_Z(双安定ポテンシャル,S_ZはスピンのZ成分,Dは定数)を持つS=2の単一スピン系に対して,V_<SA>とV_<Sf>による遷移確率Wの原子振動エネルギーhω依存性を調べた.この系はエネルギー準位の間隔が3|D|と|D|であり,hω=2|D|のときのWがhω=3|D|のときのそれの約1/100以下になった.
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Research Products
(9 results)