2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子伝導素子に代わるスピン波束伝播型局在スピン素子の理論的研究
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20710076
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
古門 聡士 静岡大学, 工学部, 准教授 (50377719)
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Keywords | 量子スピン系 / スピン緩和 / 電気双極子 / スピン軌道相互作用 / 異方性磁気抵抗効果 / s→d散乱 / ハーフメタリック強磁性体 / 模型計算 |
Research Abstract |
スピン波束伝播の持続に大きな影響を与え得るスピン緩和に関連した研究を行った.特に緩和の起源であるスピン軌道相互作用に注目し,その相互作用がもたらす「1.配位子に囲まれた磁性イオンのスピン-電気双極子相互作用」と「2.強磁性体の異方性磁気抵抗効果」について調べた. 1.配位子に囲まれた磁性イオンの系に対して,スピンSと電気双極子モーメントPの間の相互作用の表式を導出した.支配的な項はGDS_z^2P(t)である.Dは異方性定数,Gは無次元の係数,S_zはスピンのz成分,P(t)は時間に依存する電気双極子モーメント(方向は磁性イオンの振動方向)である.この相互作用はスピン軌道相互作用と磁性イオン振動から生じる.ここで磁性イオン振動はイオン内に電子分極を引き起こす[参考:S.Kokado et al.,J.Phys.Soc.Jpn.79(2010)114721].つまり,配位子(負電荷)による電場中で磁性イオンが振動する際,磁性イオンの原子核(正電荷)と電子(負電荷)の間で分極が生じる.なお,この分極は電気双極子モーメントとして記述され得る. 2.バルク強磁性体の異方性磁気抵抗効果(AMR効果)[1]の理論的研究を行った.一部の強磁性体にのみ適用可能な従来理論を拡張することで,様々な強磁性体[2]の磁気抵抗比[3]の実験結果(特に符号)を説明できる,理論模型を提案した.さらに,磁気抵抗比の符号と支配的なs→d散乱過程[4]の間の関係を明らかにした. [1]電気抵抗が磁化の方向によって変化する現象. [2]bcc-Fe(正),fcc-Co(正),fcc-Ni(正),Fe_4N(負),Half-Metallic Ferromagnet[CoMnAl_<1-x>Si_xホイスラー合金(負),La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3(負),Fe_3O_4(負)].なお,物質名の右の()内の正負は磁気抵抗比の符号を表す. [3]磁気抵抗比=(ρ_<//>-ρ_⊥)/ρ_⊥.ただしρ_<//>(ρ_⊥)は電流//磁化(電流⊥磁化)のときの電気抵抗率である. [4]sは伝導状態,dは局在d状態を表す.
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Research Products
(6 results)