2008 Fiscal Year Annual Research Report
ゼオライトLSX中に配列したアルカリ金属クラスターのフェリ磁性の研究
Project/Area Number |
20710077
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 岳仁 Osaka University, 理学研究科, 助教 (50362611)
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Keywords | アルカリ金属クラスター / ゼオライト / フェリ磁性 |
Research Abstract |
ゼオライトLSXでは, 内径約0.7nmのβケージと内径約1.3nmのスーパーケージがそれぞれダイアモンド構造で配列している.本研究ではLSX文中に種々の組成比Na-K合金クラスターを作成し, 磁性と光学的性質を調べた.LSXの1ユニット中には合計12個のNa^+およびK^+の陽イオンが分布しており, そこにK原子を吸蔵することによってケージ内にクラスターが形成される.Na-K合金クラスターの平均組成はユニット当たりNa_xK_<12-x+n>と書ける.ここでnが吸蔵数であり, クラスターに含まれるs電子数に等しい.本年度は, x=0, 1, 2, 4のNaイオン数に対してnが0-9の範囲で50本程度の試料を作成した.x=4においてはs電子数が6.5<n<8の範囲で, 転移温度T_cの最高値が20KのN型フェリ磁性が発現した.xを4から0まで減少させると, フェリ磁性の発現する電子数領域が系統的に高濃度側にシフトし, T_cは系統的に低下した.いずれのNaイオン数の試料においても, 光学反射スペクトルにはスーパーケージ中のクラスターに由来する光学遷移が観測されたが, フェリ磁性が発現する電子濃度域では, それに加えてβケージ中のクラスターの信号も観測された.つまり, 電子数増加によってフェルミエネルギーが上昇し, βケージ中のクラスターが形成されて初めてフェリ磁性が発現することが分かった.これは, スーパーケージのクラスターとβケージのクラスターがフェリ磁性の磁気副格子を形成しているという従来の予想を証明する重要な結果である.なお, Naイオンはβケージ側に分布しやすい.βケージのNaイオン数が減るとスーパーケージネットワークのフェルミエネルギーに対して相対的にβケージ側の状態のエネルギーが上がり, βケージ側の状態が占有されにくくなるため高電子濃度でフェリ磁性が発現すると理解できる.
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Research Products
(5 results)