Research Abstract |
本研究では, 課題全体を1)基礎研究フェーズと2)応用・実験フェーズとの二つに分け, 研究初年度にあたる本年度は, 1)を中心に, 基礎理論の確立や基礎技術の開発を行った. 具体的には, Dioid代数と呼ばれる離散数学系を用い, 1. 複数プロセスの同時実行, 2. 複数プロセスの同期, 3. 前後のジョブとの非競合性, などの特徴・制約条件を持つシステム, 例えば生産システム, 交通システム, プロジェクトマネジメントなどにおいて, プロセスあるいはタスクの進捗状況の把握や完了予測などを, オンラインで行う方法論の基礎的研究を行った. 上記代数系を用いると, システムのステータスが, 状態方程式と呼ばれる簡素な線形方程式で記述できるという特徴がある. 第1に, 状態方程式の拡張により, 当該アプローチの記述能力の向上を行い, 適用可能なシステムの範囲を広げた. 特に, 実システムにおいてしばしば考慮すべき, 容量・バッファサイズに関する制約条件を柔軟に設定できるようにし, 仕掛在庫の偏在を検出, あるいはそれを防止できるような方法論の構築を行った. これにより, 鉄道システムなどのように, 路線全体での列車の密度バランスや到着頻度をコントロールするといった, 従来では行えなかった制御を行うことが可能になり, システムの頑健性を向上させることができる. また, 状態方程式に基づくアプローチには, 遷移行列と呼ばれる, 事象の伝播時間を表す表現行列の計算負荷が高いという問題があった. このため, オンラインで運用するには, この行列をいかに高速に計算するかが肝要であり, 第2には, 状態方程式中の遷移行列の高速な計算方法について検討を行った. これにより, 従来は設備数をnとした時に, nの4乗のオーダーで要していた計算時間を, nの3乗, あるいはそれ以下の方法で計算する方法論を構築し, 計算時間の飛躍的な短縮を実現した.
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