Research Abstract |
繰り返し実行型の離散事象システムでのスケジューリング問題を検討対象として,既存手法の拡張により,モデルの記述能力の向上と実システムへの適用範囲の拡大を図った.具体的には,システムの挙動をDioid代数と呼ばれる離散数学系を用いて記述する際に用いる,状態空間表現と呼ばれる線形方程式系の拡張を主に検討した.特に平成21年度は,(1)異なる二つのスケジューリングポリシーを混在させる方法と,それらを相互に変換する方法論の検討,(2)タスクの実行時間に不確実性がある場合への対応,の二点について重点的に検討した.(1)については,各タスクを可能な限り早く,または遅く着手する場合に用いられる,最早・最遅ポリシーと,あらかじめ決められた時間をかけて実行する,時刻固定型ポリシーとの,両ポリシーを混在させる方法と,それらの相互変換の方法について検討した.これらの両ポリシーが混在する状況は,特に鉄道などの交通システムなどでよく見受けられる.また(2)については,CCPM(クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント)と呼ばれる,経営工学分野で用いられる手法を,Dioid代数系での状態空間表現に適用することを試みた.CCPM法においては,タスクの実行時間の不確実性を考慮しつつ,納期短縮と納期遅れの防止を両立させるために,プロジェクトバッファおよびフィーディングバッファと呼ばれるバッファを挿入する.これらのバソファの位置と挿入量の計算を,Dioid代数系で行う方法を考案した.従来法は,タスクの実行時間に不確実性がある場合への対応が困難であったが,今年度の検討により,Dioid代数系での比較的簡素な代数演算によって,適切な解を求めることができるようになり,より実際的・現実的な状況を考慮することが可能になった.
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