Research Abstract |
本研究では,実証分析を通じ,M&A (Merger and Acquisitions)が,企業の発行する債券や株式などの金融資産価格にもたらす影響について分析を行った.本分析では,日本の債券および株式市場を対象とし分析を行った.分析手法としては,金融資産価格およびM&Aに関するヒストリカルデータを用いた分析および,機関投資家を対象としたヒアリング調査を基に分析を遂行した.なお,M&Aに関するデータに関しては,レコフより提供されているMARRデータおよび各企業のホームページを用い,データベースの構築を行った.分析の結果,(1)現金を対価に株式取得を行った場合と株式を対価に株式取得を行った場合とで,それら取得対価の違いにより買収企業の社債スプレッドの挙動に違いがみられること,(2)社債市場が不安定な時期においてそれらの違いが顕著になること,(3)買収プレミアが大きい場合に買収企業の信用スプレッドが拡大する傾向にあることなとの現象を見出した.本研究では,M&Aと買収企業および被買収企業の株価変動および社債価値変動に焦点を当て分析を行ったものであるが,とりわけ,買収プレミアムが大きい場合の結果については,、株主価値および債権者価値の関連性について興味深い結論を示すものである.更に,本研究では,当プログラムにおいて構築した金融市場シミュレータを用い,市場参加者行動と価格変動の関連性について分析を行った.当分析では,投資家の評価および金融市場の規制,投資制約に焦点を当てた分析を実施した.
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