Research Abstract |
本研究は,東アジアの物流に関し,時間の概念を取り入れた海上輸送と陸上輸送とを統合した輸送ネットワークによる物流シミュレーションを行い,統合ネットワークの数理的分析および,全体輸送効率から見た海上輸送システムの改善を行うことを目的としている. まず,昨年度作成したデジタル航路ネットワークを利用して,各コンテナ船の地域別航海距離を算出し,コンテナ船をクラスターにまとめた.その結果,アジア内航路や欧州内航路では積載能力の小さいコンテナ船が短距離航海を高頻度に繰り返していること,太平洋航路や欧州-アジア航路ではその逆の傾向が見られることが明らかになった. 次に,ネットワークの数理的分析として,船舶ごとに主要な寄港パターンを抽出し,寄港順序と航海距離との関係を分析した.クラスターごとに見ると,アジア内航路や欧州内航路では短距離の寄港パターンを数多く周回しているのに対し,太平洋航路や欧州-アジア航路では長距離の寄港パターンとなっていることが明らかになった.さらに,寄港地の巡回セールスマン問題を解くことで,寄港パターンが航海距離からみて効率的であるか分析したところ,アジア内航路や欧州内航路では,多くのコンテナ船の寄港パターンは最短寄港順であるものの,そうではないコンテナ船では,寄港パターンの迂回率は高く,航海距離からみると非効率的であるという知見が得られた. そして,地球温暖化の影響により将来実用化が見込まれる北極海航路に関して,その影響を開発したシミュレータを用いて推計した.その結果,現状の航海日数を維持した上で,航海距離が短縮された分だけ船速を落とすことができれば,燃料消費量を約40%~50%削減できることを示した. 開発したシミュレータは,航路ネットワークのリンクを削除・追加することで,社会情勢地球環境等が変化した際のコンテナ船航路への影響を評価することができ,非常に有用であると考えられる.
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