2008 Fiscal Year Annual Research Report
埋没水害地形の同定にもとづく水害リスク評価と洪水ハザードマップの高精度化
Project/Area Number |
20710144
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東 良慶 Kyoto University, 防災研究所, 助教 (50464201)
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Keywords | 水害地形 / 破堤 / 物理探査 / 比抵抗探査 / 表面波探査 / 木津川 / 水害リスク / 治水地形分類図 |
Research Abstract |
流域の特性を反映した水害リスク評価を行う上で, 過去の水害の痕跡である破堤地形や落堀などの埋没水害地形を読み解き, 現在の土地利用との関係性を防災的な観点から考えることは非常に重要である. 2008年2月, 空中写真や古文書等の情報にもとづき破堤地形や旧河道などの水害地形を分類し, 地形図上に示した治水地形分類図がWEB上で一般にも公開された. これらは流域防災の視点から非常に有用である. しかし, 作成された当時(70年代)からの土地利用の変化等には対応できていない. また, 堆積物の質など, 水害地形を形成したイベントの物理過程を復原するには情報が不十分であり, 水害リスク評価の高精度化は現状のままでは望めない. そこで, 本研究では, 流域特性をふまえた水害リスク評価の高精度化を視野に入れ, 非破壊物理探査法を適用することにより, 極浅層に埋没した水害地形環境の物理的な同定を試みる. 本年度は木津川下流域における埋没破堤地形を重要調査エリアとし, その同定を行った. また, 物理探査結果等から破堤に伴う氾濫土砂量の推算し, 過去の破堤イベントのスケールを推察した. 得られた主要な結論は以下の通りである. 1) 破堤地形の同定に対する, 比抵抗探査および表面波探査による統合物理探査が非常に有効であることが示された. 本研究の手法を用いれば, 氾濫原の地中に埋没した水害地形の3次元的空間分布を極めて効率的に調査することができ, 流域の氾濫特性を評価する上で重要な情報が得られる. 2) 本調査エリアにおいて, 木津川から破堤氾濫した土砂量を推算した結果, 100〜200万立方メートルと算定された. 3) 上記の量の土砂を流送(等流かつ掃流砂形態で移動したと仮定)するために要する水量は約10億トンと推算され, 既往最大流量(伊勢湾台風来襲時)の3億トンとほぼ同じオーダーであり, 発生し得る規模のイベントであることを示した.
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