2008 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝資源としてのワサビー遺伝的多様性と栽培史から保全を考える
Project/Area Number |
20710181
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山根 京子 Osaka Prefecture University, 生命環境科学研究科, 助教 (00405359)
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Keywords | ワサビ / 遺伝資源 / 栽培起原 / 品種分化 / 野生種 / 日本固有種 / 葉緑体DNA |
Research Abstract |
本研究は、ワサビとその野生種の現在の遺伝的構造を分析し、遺伝的多様性がどのようにして形成されたのか、歴史的背景をふまえたうえでそのプロセスの復元を試みることを目的としている。近縁野生種も遺伝資源としての候補となり得るため、今年度は、標本データをもとに中国湖南省に自生するワサビに酷似した野生植物を現地調査した。日本のワサビとともに葉緑体DNAを分析した結果、ワサビと本植物は約580万年前に分化したと推定された。これまでに収集した日本と中国のワサビ属植物の系統解析に基づきワサビの成立過程を考察すると、中国に分布するワサビ近縁野生種と日本のワサビは、第四紀以前は中国大陸から日本列島にかけて連続的に分布し共通の祖先を有していたが、第四紀以降日本のワサビは隔離され、その後ワサビは日本列島で独立に進化し、固有種として成立したと考えられた。今回あらためてワサビの固有性が示され、日本におけるワサビの遺伝資源としての価値が確認できた。また本研究ではさらに詳しいDNA分析を行うために、10領域の葉緑体DNAのマイクロサテライトマーカーを開発した。本マーカーをもちいることで、地域集団間の遺伝的類縁関係を明らかにすることができ、真妻、ふじだるまなどワサビの主要品種をジェノタイピングすることができた。文献や聞き取りによる調査によって明らかにした品種の系譜と照らし合わせることで、さらに詳しいワサビの栽培史を明らかにすることが可能になる。なお、本研究で収集したワサビ属の個体は現在、大阪府立大学にてexsitu保全を行っている。
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