2009 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝資源としてのワサビ-遺伝的多様性と栽培史から保全を考える
Project/Area Number |
20710181
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山根 京子 Osaka Prefecture University, 生命環境科学研究科, 助教 (00405359)
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Keywords | ワサビ / 遺伝資源 / 栽培起原 / 品種分化 / 野生種 / 日本固有種 / 葉緑体DNA |
Research Abstract |
本研究は、ワサビとその野生種の現在の遺伝的構造を分析し、遺伝的多様性がどのようにして形成されたのか、歴史的背景をふまえたうえでそのプロセスの復元を試みることを目的としている。今年度は、品種間や集団間の遺伝的多型を検出するための、本研究で新規に開発した10領域の葉緑体DNAのマイクロサテライトマーカーをもちいて、ワサビ品種や日本各地の自生地集団、そしてユリワサビの塩基配列を決定した。ユリワサビは、これまでの研究から、ワサビと非常に近縁であり、ワサビの進化を考えるうえでも重要な野生種であることがわかっている。まず、本マーカーをもちいて、真妻、ふじだるま、島根3号など、主要なワサビ品種をジェノタイピングすることができた。品種群は、大きくわけて、2群にわかれることがわかったが、そのなかでも、現在でも静岡で主要品種である真妻は、特異的なDNAタイプをもち、在来や野生の集団にも、真妻に遺伝的に近いDNAタイプをもつ個体はみつけられなかった。真妻発祥の地である和歌山県や奈良県でも、原品種は消失されたとされる貴重な品種なだけに、興味深いデータとなった。また、日本各地の野生集団の地域集団間の遺伝的類縁関係を調べたところ、日本で最も古いタイプのDNAを持っている集団は岐阜県にあることがわかった。本タイプのDNAをもつ集団は1集団しかみつけられていないこともあり、なぜ、岐阜県に古い集団が残っているのか、地史とも関連して重要であるため、今後、周辺の集団を調査する必要がある。
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