2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20710182
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
松林 尚志 Tokyo University of Agriculture, 地域環境科学部, 研究員 (30468699)
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Keywords | 域内保全 / 大型絶滅危惧種 / カメラトラップ / 塩場 / 生物多様性 / 熱帯商業林 / 哺乳類 / 野生生物保全 |
Research Abstract |
大型哺乳動物を考慮した熱帯商業林管理に関する具体策を提案するために、これまで調査を実施してきたマレーシア・サバ州デラマコット商業林(以下、デラマコット)の比較調査地として、同州最大河川を挟んでデラマコットの対岸に位置するマルア商業林(以下、マルア)を選定し、塩場に着目した調査を実施した。マルアは、計画的な森林伐採が行われているデラマコットとは対照的に、2007年まで大規模な伐採が行われ、狩猟も含めた人為的撹乱が大きい地域である。2008年7月からマルアにおいて、塩場と塩場訪問種の同定し、デラマコットと比較した。 マルアでは、これまでに5カ所の塩場を同定した。塩場を訪問種は、デラマコットと同様に、普通種ではサンバーやヒゲイノシシ、絶滅危惧種ではオランウータンやアジアゾウが高い訪問頻度を示し、これらの種にとって塩場利用は普遍的な行動であることが明らかになった。また、デラマコットの塩場では確認されていないリーフモンキー2種を確認した。一方、マルアでも生息が確認されているバンテンは、塩場では確認されなかった。今回対象とした塩場は、道路から近いアクセスの良い場所にあった。デラマコットでは人為圧が低い塩場での訪問頻度が最も高かったことから、過去の狩猟圧の影響を受けている可能性がある。 また、オランウータンの塩場利用については、訪問頻度は、両調査地とも午前よりも午後に高い傾向を示した。訪問個体は、体サイズが大きく地上利用が多い優位オスに偏ると予想されたが、地上利用が少ない親子連れなども多く確認された。訪問時刻の偏りと複数個体による利用を考慮すると、塩場周辺は、単独性のオランウータンにとって他個体と接触する可能性の高い場所の一つであると考えられた。 以上から、現在デラマコット以外の地域においても、塩場の重要性、特にオランウータンの塩場利用が普遍的な行動であることも確認されつつある。次年度は、データを蓄積することでより信頼性の高い結果を得る予定である。
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