Research Abstract |
21年度は,(1)淡渫土区における生物・物理環境分布調査および(2)生息地再現実験区におけるシオマネキ加入過程のモニタリングを行った. (1) 大潟漁港干潟と自然干潟(那賀川・勝浦川・吉野川河口干潟)におけるシオマネキの新規加入量調査の結果,2009年の新規加入量は,3つの自然干潟全てにおいて,大潟漁港干潟を有意に上回った(2~5倍程度).物理環境では,自然干潟は大潟漁港干潟と比較して砂分の割合が高い傾向にあったが,強熱減量は大潟・自然干潟間で明確な違いは見られなかった.シオマネキの成体は,大潟漁港干潟において自然干潟と遜色ない水準の密度が確認されたが,新規加入個体密度は大潟漁港干潟において有意に低かった.餌となる底生珪藻量は,大潟干潟において自然干潟と比較し少なかったものの枯渇しているわけではなく,体の小さい新規加入個体の成長・生存を制限する要因とは考えにくい.したがって,大潟漁港干潟では,プランクトン幼生による加入プロセスに対して何らかの制限がかかっている可能性が示唆された. (2) シオマネキは実験開始4ヵ月後から浚渫土実験区においてのみ顕著に出現が確認され,その傾向は2009年も維持されていた.また,実験開始初年度,シオマネキの密度は浚渫土実験区において著しく上昇したが,2年目以降季節的な増減は見られたものの最高密度に大きな変動は見られなかった.しかしながらこの密度は,実験区外の浚渫土区と比較するとほぼ半分であるとともに,新規加入後2年未満の小型個体(稚ガニ)がほとんど確認されなかった.さらに,浚渫土実験区における密度は,徳島市南部勝浦川河口干潟の生息密度の約1/5と,自然干潟と比較すると非常に低い水準であることが明らかになった.この結果より,シオマネキは粘性浚渫土において十分分布可能なことが明らかになったが,(1)の結果同様,小型個体が少なく,来年度はこのメカニズム解明に取り組む.
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