2008 Fiscal Year Annual Research Report
オスの体サイズ依存的な繁殖能力に基づくヤシガニの資源管理手法の検討
Project/Area Number |
20710184
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
佐藤 琢 Fisheries Research Agency, 西海区水産研究所・石垣支所, 任期付研究員 (20455504)
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Keywords | ヤシガニ / 繁殖生態 / 資源管理 / 体サイズ依存的繁殖能力 / 射精量 / 絶滅危惧種 / 乱獲 / 個体群増殖率 |
Research Abstract |
近年,ヤシガニは乱獲によって世界的に資源量が急激に減少しており,日本でも絶滅危惧II類に指定されている.しかし,本種の繁殖生態のほとんどが解明されていないため,世界的に適切な資源管理策は行われていない.そこで,本種に対する資源管理策の策定に向け,本年度は交接や産卵が行われる条件の把握や飼育下での繁殖の再現,また雄の体サイズと繁殖能力の関係の把握を目的とした. これまで本種の交接の観察例は一例に限られており,また産卵が行われる条件(場所や時期)は全く明らかにされていない.そこで,まず交接と産卵の行われる条件を把握するため,繁殖期を中心に月齢に合わせて野外調査を行った.その結果,交接や産卵の撮影に世界で初めて成功した.交接は海岸近くの陸上で行われ,また産卵は海岸近くの陸上の穴の中で主に新月から上弦の月の頃に行われることが明らかになった.これらの観察に基づき,産卵環境を模した飼育容器内で繁殖の再現試験を行った結果,交接から産卵までの一連の繁殖の再現に世界で初めて成功した.飼育下で交接から産卵を再現させる技術の確立は,雌雄の体サイズを操作した交接試験の実施を可能とし,本種の繁殖生態の解明および資源管理策(例えば捕獲規制サイズの設定など)に今後大きく貢献する. 次に,飼育下において様々な体サイズの雄と雌とペアリングさせ,雄の体サイズと繁殖能力の関係について調べた.その結果,雄は自身に比べて同サイズもしくは小さな雌としか交接できないことや大きな雄ほど交接あたりの射精量が多いことがわかった.また,小さな雄と交接した雌の受精率は低いことが示唆された.これらの結果から,乱獲が原因と考えられる雄の小型化がみられている本種個体群では,乱獲による単なる数的減少に加えて,小型化に伴う雄の繁殖能力の低下によっても個体群増殖率が低下し,相乗的に本種の資源量が減少していることが考えられた.
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