2009 Fiscal Year Annual Research Report
資源を巡る対立・協調の多元性と固有性:東南アジアの事例から
Project/Area Number |
20710188
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
生方 史数 Okayama University, 大学院・環境学研究科, 准教授 (30447990)
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Keywords | 東南アジア / 資源 / 制度 / コンフリクト / 協調 / コモンズ / アクター / ガバナンス |
Research Abstract |
現代社会において、資源を巡る争いはローカル、ナショナル、グローバルのレベルで激しさを増しており、これらの対立を協調へと導く制度や規範の生成が焦眉の課題となっている。本研究では、東南アジア大陸部(タイ)と島嶼部(インドネシア)における様々な資源(森林・プランテーション、鉱物資源など)を事例として、資源を巡る対立と協調に関連する政治的なプロセスを明らかにする。また、それらのプロセスが持つ多元性と固有性、ひいては経路依存性を考慮しつつ、対立から協調への移行プロセスを提示することで、地域に固有で多元的なガバナンスのあり方を検討する。 平成21年度は、研究プロジェクトの申請、受入承諾を経た後、比較的長期間現地滞在し、文献資料収集と広域調査・事例調査を行うことになっていた。しかし、平成21年9月から岡山大学大学院環境学研究科に移り、講義等の負担が増えたこともあって、当初予定していた長期滞在調査がほぼ不可能になってしまった。そのため、今年度は現時点でもっているデータや知見、特に森林資源を巡る対立と協調に関するものをまとめることに心を砕いた。具体的には、様々な森林管理制度が、東南アジアを中心とした熱帯アジアの地域社会に与える影響を考察し、地域住民の目線からガバナンスのあり方について考察した。その結果、1) 国家主体の「従来型」森林管理制度が、「住民参加型」や「市場志向・グローバル型」の制度を取り込む形で変容しつつあること、2) このような変容が、各社会におけるアクターの配置構造によって異なる経路を辿りつつも、全体としては「上」からの論理を強化する結果を生みつつあること、3) しっかりとしたインフォーマルな制度的基盤を有する「強くしなやかな社会」が、このような「上」からの制度に対抗したり、制度をうまく使いこなしたりできる可能性を持つことが明らかになった。これらの成果は図書として出版した。
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