2008 Fiscal Year Annual Research Report
長期化難民の社会・文化・アイデンティティの再構築と開発に関する人類学的研究
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20710190
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内藤 直樹 Kyoto University, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 研究員(科学研究) (70467421)
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Keywords | 文化人類学 / 地域研究 / 開発 / アフリカ / 難民 / 紛争 / 平和構築 / 在来 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、アフリカが直面している「難民状態の長期化(Protracted Refugee Situations)」にかかわる諸問題を理解し、難民やホスト社会を対象に実施されるべき開発計画の策定に必要な基礎的資料を提供することにある。そのために、近年注目される国内避難民(Internally Displaced Persons : IDP)を含む広義の難民を対象にしたケニアでのフィールド調査を実施し、難民が生活を再編するためにおこなう創造的な文化・社会的実践等の様態を解明する。4年計画の初年度である平成21年度は、京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の構成員とともに「紛争・難民・平和研究会」を立ち上げ、計5回の研究会を開催した。この研究会での議論によって、難民問題を、紛争の発生から平和構築にいたる一連のプロセスの中に位置づけて総合的に考察するための枠組み作りをした。また今年度は2008年1月に発生したケニア大統領選挙後の暴動による難民と国内避難民発生後の秩序の再構築過程に焦点をあてた。これまでアフリカの難民受け入れ大国であったケニアは、この暴動によって「難民発生国」としてのはじめての経験をした。暴動は短期間で収束したが、民族間の紛争や難民化を経験した地域社会の人びとによる、秩序の再構築に向けたこころみが続けられている。対象としたケニア北部の牧畜民は、先鋭化した民族や文化的帰属の差違を多義的で複合的な状態に戻すことで、秩序を再構築しようとしていた。そのために人びとは他民族との関係を調整する在来のやり方を動員していた。すなわち本事例は在来の論理や制度にもとづく平和構築実践の可能性を示していると考えられる。上記の研究成果をKyoto Working Papers on Area Studies No.46、NO.69および『アジア・アフリカ地域研究』8-2号に掲載した。また、学位申請論文「北ケニア牧畜民アリアールにおける社会・文化・アイデンティティの再編と開発に関する人類学的研究」を京都大学に提出し、博士号を取得した。ナイル・エチオピア学会および生態人類学会において発表した。
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