2009 Fiscal Year Annual Research Report
長期化難民の社会・文化・アイデンティティの再構築と開発に関する人類学的研究
Project/Area Number |
20710190
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
内藤 直樹 National Museum of Ethnology, 研究戦略センター, 機関研究員 (70467421)
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Keywords | 難民の地域統合 / 文化人類学 / ケニア / ソマリア / 長期化難民 / 平和構築 / 紛争後社会 / 持続可能な開発 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、アフリカが直面している「難民状態の長期化」にかかわる諸問題を理解し、難民やホスト社会を対象に実施されるべき開発計画の策定に必要な基礎的資料を提供することにある。そのために、世界最大の難民キャンプであるケニア・ダダーブ難民キャンプでのフィールド調査を実施し、難民が生活を再編するためにおこなう創造的な文化・社会的実践等の様態を解明する。4年計画の2年目である平成21年度は「紛争・難民・平和研究会」において計3回の研究会を開催した。また国立民族学博物館における試行的プロジェクトー若手研究者による共同研究において「<アサイラム空間>の人類学:社会的包摂をめぐる開発と福祉パラダイムを再考する」と題した共同研究を主宰した。難民をはじめとする様々な社会的弱者の包摂をめぐる諸問題は開発・援助や医療・福祉に関するさまざまな領域において検討されてきた。しかしながら今日の社会的弱者の包摂をめぐる包括的なパラダイムの把握には至っていない。本共同研究においては、難民、先住民、ホームレス、障害といった個別の問題を超えて、孤立した社会的弱者が地域社会に遍在する近年の状況を把握するために、<アサイラム空間>という概念をもちいて多様な領域・現場における事例を比較検討し、その特徴や問題点を解明する作業に着手している。 また今年度の現地調査においては、ダダーブ難民キャンプのソマリ難民とケニアの地域住民およびソマリアに残った人びとからなるネットワークに焦点をあてた。生活を再構築する必要があるのは、難民だけではない。県の総人口に匹敵する数の難民を受け入れざるを得ない状況に陥ったケニアの地域住民も同様である。しかしながら難民とケニアの地域住民は新たなつながりを創り出し、生活を再構築しようとしていることが明らかになった。次年度は、このような難民と地域社会の人びと双方による生活の再構築にむけた試みや創意工夫を見ていきつつ、「難民の地域統合」の可能性を検討する。
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