2008 Fiscal Year Annual Research Report
哲学、教育、大学をめぐるジャック・デリダの理論と実践
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20720002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西山 雄二 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 研究拠点形成特任教員 (30466817)
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Keywords | デリダ / 教育 / 大学 / 脱構築 / 人文学 / 国際哲学コレージュ |
Research Abstract |
本年度の研究成果の主要な点は次の4点である。1)2008年3月に拙訳で刊行された『条件なき大学』(月曜社)から出発して、デリダの大学論の独創性を認識や実践の能力とは異なる信や希望をめぐる思想として解明し、グローバル時代におけるその今日的な意義を強調した。また、デリダによるプラトンのコーラ解釈を、教師と学生が共に問いに曝されるという教育法論として読み解いた。この新しい知見は、デリダ晩年の宗教論、彼の教師論との比較検討を進めることで大きく発展する可能性をもつ。2)近代哲学史における哲学者と大学の理論的・実践的関係を問い直す共同研究「哲学と大学」を東京大学で主催し、その成果を論集『哲学と大学』(未來社)として公刊した。本論集ではカント、フンボルトか照ハイデガー、デリダに至るまで、理性の制度化を構想しつつ、大学に期待し、あるいは失望した哲学者たちのドラマが描き出された。3)デリダが創設した国際哲学コレージュの独創性に関して、ミシェル・ドゥギー、カトリーヌ・マラブーら関係者7名に取材をおこなった。国際哲学コレージュは哲学の領域横断的な可能性を引き出すために創設された研究教育機関であるが、その理念と現実との乖離の問題、資金や運営の内実などを関係者の証計か照把握することができた。4)上記の研究活動は主に海外での研究発表を通じて展開された。韓国、アルゼンチン、フランスでの国際会議において大学の諸問題を各国の研究者と有益な議論をおこなったことは、今後の国際的な共同研究の基盤となった。
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