2011 Fiscal Year Annual Research Report
心の哲学と知識の哲学―近代イギリス哲学と現代哲学の比較を手がかりにして
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20720003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸田 剛文 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 准教授 (30402746)
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Keywords | 哲学 / 認識論 |
Research Abstract |
22年度までの研究においては、以下のことが研究された。まず、デカルトからロック、バークリ、ヒューム、そしてリードといたる過程で、知識概念が柔軟なものへと変化していくこと、そしてそのような知識概念の変化が起こる背景には、自然科学の発展に伴うわれわれの認知メカニズムの解明に大きな焦点があてられるようになったこと。第二に、現代における認識論の展開においても、感覚与件論のような強い基礎づけ主義的な立場から、ゲティア問題を経て、自然主義の隆盛へとつながるような、近代の認識論にも似た知識概念の柔軟化が生じているということである。そしてそこでもやはり、脳科学や神経科学の発展に伴う認知科学の発達が大きく影響していることが研究された。 認知科学などの発展とともに広く展開された自然主義的認識論も、その内容は多岐に渡る。特に、自然主義的認識論は、その規範の役割をめぐって、異なる立場のものであると分類されることが多い。特に、(クワインの有名な論文「自然化された認識論」に代表されるような)規範性が最も低いとされる記述的認識論は、知識とは何かという問題を伝統的な認識論ほど重視しないものであるとも言え、デカルト的な認識論から大きく認識論が変化していることを示している。 23年度は、これらの認識論とは別のアプローチの可能性として、プラグマティズム的な知識概念による認識論の問題解決への試みに着手した。その際、「自由」の概念を例にし、特に現代の自然主義的還元主義とは異なる形での思考方法を提示した。基礎付け主義であろうと自然主義であろうと、「Xとは何か」というと問題形式に対する唯一の答えを与えようとするものであるが、本年度の研究において、その解答に多様性を持たせる多元的な世界観の可能性を提示した。ただし、プラグマティズムにも伝統と多様性があり、その内実それ自体の研究はいまだ十分なものではなく、今後の研究へと引き継がれることになる。
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Research Products
(1 results)