2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本における「死者」の観念をめぐる倫理思想史的研究?神仏観念との関わりを中心に?
Project/Area Number |
20720005
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
吉田 真樹 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20381733)
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Keywords | 死者 / 霊魂 / 死 / 日本 / 倫理 / 神 / 仏 / 和辻 |
Research Abstract |
平成22年度は「中世・近世日本における「死者」」を研究課題とした。申請書に挙げた(1)神、(2)仏については、それぞれ(1)霊魂としての八幡神の性格、(2)『往生要集』における霊魂の非記述、について問題視角を得た。また(3)庶民については、(3)『死霊解脱物語聞書』における業の転変について読解により知見を深めた。 さらに近世の(2)仏と(3)庶民の部分については平成20年度の成果を補強・発展させる形での考察を行い発表した。具体的には、近世日本の「死者」を正しく捉えるために、通説化している和辻思想史図式を批判的かつ具体的に乗り越える作業を行った。和辻思想史図式の最大の問題点は、「近世は儒学の時代である」とする思想史図式によって、近世庶民のもった仏教思想を隠蔽することにある。これは大きく捉えれば、近代特有の偏向の一つの現れといえるが、特に和辻においては極めて屈折した形で現れるものである。即ち、和辻の思想史的叙述の集大成である主著『日本倫理思想史』においては、近世庶民仏教思想を隠蔽していながら、他の著作において、倫理思想史ではなく芸術史という新たな異なる文脈を与えつつ、その枠内では近世庶民仏教由来の諸芸能を称揚するということがあるのである。この背景に、和辻のもう一つの主著『倫理学』における「死」の隠蔽があることはいうまでもない。和辻の思想史図式は、思想史研究者に対して強力な呪縛力をもち続けて現在に至っており、以上の点が克服されない限り、新たな思想史叙述は不可能である。その意味で、今年度の研究成果は新時代の思想史叙述への道を開いた画期的な論考であるといえる。以上の考察結果の半分を論文1本として発表した。また、5件の研究会発表を行った。また、霊魂についてカルチャー・センターで4回の講演を行った。
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Research Products
(2 results)