2010 Fiscal Year Annual Research Report
経験構造の変容の現象学~発達と治癒の分析を軸として
Project/Area Number |
20720008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 靖彦 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (30328679)
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Keywords | 潜在的視線触発 / 現象学 / 超越論的テレパシー / 看護研究 / 精神病理学 / 自閉症 |
Research Abstract |
従来は精神科や心理臨床における専門家との共同研究が多かったが、本年度は看護や福祉領域の専門家との研究を積極的に行い新しい知見をうることができた。本年度は今までの延長線上で心理臨床を出発点として身体と空想の関係から主体変容論を展開するだけでなく、とくに植物状態や重度の自閉症、ALS患者などコミュニケーションをとることが難しい人において経験構造がどのような形をとるのか、あるいは看護における看護師の行為と技術習得について研究を進めた。 理論的には潜在的な視線触発、純粋な超越論的テレパシーといった概念で名指されるようなプリミティブな対人関係に関する構造を発見できたことが、本年度の大きな成果である。 このような成果は、『精神科治療学』『看護研究』といった医療関係の学術雑誌でこの問題に関して論考を発表し、あるいは、Phenomenology and the Cognitive SciencesやStudia Phaenomenologicaなどの海外の哲学専門誌で査読付きの論文を出版した。また『現代思想』での論文や木村敏との対談のような形で一般紙でも広く成果について説明する機会を得るとともに質的心理学会研究会での発表や音楽療法学会での講義など他領域の専門家とも討議することができた。今回の科学研究費の成果は来年度単著として出版したいと考えている。 口頭発表においてはフランスや台湾での国際学会での発表を行う一方で、音楽療法学会での講義や臨床家を対象とした講演などの形で研究成果をもとに理論を説明する機会を持つことができた。
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