2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720018
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 吉幸 筑波大学, 人文社会系, 講師 (90420075)
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Keywords | ジャック・デリダ / 国家の残虐性=暴力性の脱構築 / 来るべきデモクラシー / 歓待、贈与 / 民主主義の自己免疫 |
Research Abstract |
本年度は、研究のまとめとして、ジャック・デリダ晩年の代表的な政治的著作『ならず者たち』を取り上げ、集中的に分析した。 ジャック・デリダは、『ならず者たち』(二〇〇三年)の中で「自己免疫[auto-immunite]」という概念を導入し、民主主義の持つある種のパラドックスについて分析している。自己免疫とは、自己に対する侵害から自己を保護するために、自己そのものを破壊してしまうという逆説的な過程である。この概念によれば、民主主義は、「民主主義にとって善いことのために」、民主主義の理念そのものを停止してしまうことがある。こうした考えに従って、例えば、九・一一以後のアメリカにおける「民主主義」や「対テロ戦争」について考えることもできる。 しかしさらに逆説的なのは、デリダがこうした民主主義という政体の自己性、自己権力性、あるいは「自権性[ipseite]」(その範例的な形象は「主権」である)の論理を乗り越えるために、再び「自己免疫」という概念を持ち出していることである。この点をめぐって私たちは、自著『権力と抵抗』において「残虐性なき死の欲動」と名づけたこの「自己免疫」が、いかにして主権に固有な「自権性」を乗り越えることができるのかを、デリダにおける「歓待」の理論から考察した。結論として、私たちはこのような「自己免疫」に関する問いを通じて、デリダにおける「来るべきデモクラシー」の射程について考察した。端的に述べれば、デリダの言う「来たるべきデモクラシー」とは、主権的同一性を異他的なものへと開き、絶対的民主主義を確立せよという定言命法の謂いなのである。
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[Presentation] L'enseignement sous le regime neoliberal2012
Author(s)
Yoshiyuki SATO
Organizer
Seminaire 《L'universite comme architecture (ir)rationnelle de la philosophie》(tenu par Yuji Nishiyama)
Place of Presentation
College international dephilosophie, Paris(フランス共和国)(招待講演)
Year and Date
2012-03-29
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