2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代ユダヤ思想史と歴史主義の問題―ローゼンツヴァイクとシュトラウスの比較研究―
Project/Area Number |
20720019
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 貴史 Seigakuin University, 総合研究所, 研究員 (70445138)
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Keywords | フランツ・ローゼンツヴァイク / レオ・シュトラウス / ヘルマン・コーエン / ユダヤ・ルネサンス / 歴史主義 / 反歴史主義 / 近代ユダヤ哲学 / 啓蒙主義 |
Research Abstract |
平成21年度もまた前年度から引き続き、ローゼンツヴァイクとシュトラウスの比較思想研究、ならびにその思想史的背景(「(ユダヤ的)歴史主義/反歴史主義」)の考察を中心に進めたが、本年度はそこにH・コーエン、E・トレルチ、W・ベンヤミンの思想や<ユダヤ・ルネサンス>の問題も絡め、とくに以下の二点を研究した。 1.ローゼンツヴァイク研究に関しては、これまでの研究を単著として出版した。また日本宗教学会での発表ではシュトラウスによるローゼンツヴァイク批判の内実を分析した。従来の研究ではシュトラウスはローゼンツヴァイクの歴史主義を批判したといわれているが、その奥にはさらに「啓蒙主義と正統派の古典的論争」という問題が控えており、シュトラウスのローゼンツヴァイク批判の射程は歴史主義批判のみならず、ローゼンツヴァイクの啓蒙主義批判の不徹底さをもおさめていることを明らかにした。 2.トレルチとコーエンの思想の比較を通して、同時に彼らの方法論をめぐる論争は最終的には<文化総合>という問題に直結しており、そこには両者の歴史理解の齟齬があることを明らかにし、彼らの思想をラディカルに批判したローゼンツヴァイクの姿も浮き彫りにした。またベンヤミンのメシア的時間論を検討し、やはりそこにもローゼンツヴァイクの時間論に通じるような「反歴史主義的」な時間意識があることを突き止めた。加えてブーバーの「ユダヤ・ルネサンス」論を分析し、これは当時の時代状況を知る上で優れたテクストであることを確認した。すなわち、ローゼンツヴァイク、シュトラウス、そしてベンヤミンの思想は「歴史主義/反歴史主義」のみならず、<ユダヤ・ルネサンス>というコンテクストの中でも読まれなければならないのである。
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Research Products
(7 results)