2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720025
|
Research Institution | Onomichi University |
Principal Investigator |
深谷 訓子 尾道大学, 芸術文化学部, 准教授 (30433379)
|
Keywords | 美術史 / 芸術学 / オランダ美術 / バロック美術 / 美術の南北交流 / カラヴァッジスム / パトロネージ |
Research Abstract |
本研究の目的は、とくに興味深い過渡期である1570年から1630年までを中心に、ネーデルラント出身の画家たちがローマで注文を受けて制作した作品に関する情報収集(目録化)と、なかでも特に重要と判断される作品に関する個別研究を行うことを通じて、その全貌に迫るということにある。本年度の研究成果は、主に次の点にある。まず、注文制作作品の目録化を進展させたこと。注文契約の記録等が残るものは稀なため、状況から注文制作と判断されるもの、もしくはその可能性の高いものは含めていく方向をとったため、完全に厳密とはいえない部分もあるが、これにより、北方画家が得ていた注文に関して一定の知見を得ることができた。第二に、そうした全体の動向を見渡した際に非常に顕著な特徴を備えた作品として、まだ年若いディルク・ファン・バビューレンがローマの重要な教会のひとつ、サン・ピエトロ・イン・モントーリオ教会に得た祭壇画《キリストの埋葬》を選択し、ローマにおけるスペイン王の代理人であったピエトロ・クシーデという注文主との関係から、考察を行ったことである。その過程で、バビューレンの図像源泉がカラヴァッジョだけでなく、ティツィアーノの作品にもあるのではないかという可能性を見出すとともに、数々の証左から、バビューレンが親スペイン派の人脈の中で活動していたという新知見にたどり着いた。この検討の成果は、平成23年の美術史学会全国大会で発表した。またこの知見は、16世紀末から17世紀初頭にかけてのローマにおける北方画家の活動を考える上でも、同地のスペイン人コミュニティ(イタリア人のなかの親スペイン派も含む)と美術のパトロネージの関係をさらに踏み込んで考察すべきという、今後の研究の新たな視点を示すことになった。
|