2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720028
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
古川 誠之 Waseda University, 文学学術院, 助教 (10409617)
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Keywords | 西欧史 / 美術史 |
Research Abstract |
本研究は前近代ヨーロッパ史における行為主体である都市共同体を対象とし、都市共同体が発行する法資料に付される「印章]の図像調査を目的としている。この都市印章図像はヨーロッパ各地において多様なモチーフを示している。しかし研究代表者の先行調査によると、都市印章図像のモチーフは、ある地域では特定の図像類型が寡占的にあらわれる、との仮説を立てることができる。一例を挙げると、イタリア北部からライン・ムーズ川流域の司教座を中心とするエリアでは、聖人像、教会堂、エデンの園の「閉じた壁]を採用する傾向が多く見られる。本研究の意義は、究極的にはこのような類型の嗜好がヨーロッパ文化の内部において意味することを示そうとするものである。 しかし本研究においては、上述のライン・ムーズ川流域からライン河口地域という狭いエリアに限定される!当該地域における宗教的図像モチーフの意味と、いわゆるヨーロッパ中世都市成立の中心といわれる同地域の文化との関連性が具体的に問われる。これにより、従来は西洋史学と美術史において別個に取り扱われてきた資料の、より学際的な検討を加えるという点において、本研究の独自の意義と重要性がある。 上述の方向性に従って研究を実施した。本年度は両専門分野の文献追跡に費やされ、具体的な仮説として以下の定義を策定しえた。すなわち、中世ヨーロッパの特徴のひとつを示すのは、政治システムと宗教システムの統合的発展を早くから見たという点にある(いわゆる、教会としての国家)。そこでは宗教システムの成員である聖職者層だけでなく、いわゆる俗人集団もまた、同様の宗教システムの価値観に重要性をみとめている。そしてこの価値のシステムの中にアイデンティティを表象させようとした可能性がある。この仮説を検討するための根拠として、都市印章図像を調査することが重要である。
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