2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720028
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
古川 誠之 Waseda University, 文学学術院, 助教 (10409617)
|
Keywords | 西欧史 / 美術史 |
Research Abstract |
都市印章がある集団を表象するオブジェであると仮定するならば、このオブジェを自らのものとする主体は誰であり、誰と区別されているのか。主体と非=主体の差異はどのような過程で生まれるのか。表象文化の担い手とその外部集団との生成過程を検討することは、本研究の目的にとって重要な前提となる。とりわけ都市印章を校正する図像および銘文に明らかにキリスト教的美術表現の性格が認められるならば、それは一方では俗人のキリスト教化の進展を裏付けるものと見ることが出来るし、他方では非キリスト教徒の都市住民が疎外される過程を裏付けるものと見ることも出来る。 第二年次となった当該年度には、上述のような課題設定のもと、都市在住の集団がいかにして「都市印章を担う主体」と非=主体とに分化していく段階に踏み込んでいくのかを調査した。第一の検討課題として、主体である「都市ミニステリアール出自集団」が上位権力者の権威を相対化しつつ都市指導層を形成するプロセスについて検討がなされた。第二の検討課題として、古くから都市住民に含まれているユダヤ人集団が、非キリスト教徒として異なる存立基盤を持つがゆえに、都市印章に表象される「都市民」から区別されていく過程を浮き彫りにすることが試みられた。 当該年度においては、理念史を裏付けるための局地的な歴史データをそろえるために、主としてドイツ共和国ラインラント=プファルツ州内での調査研究が行われた。特に同州ヴォルムス市におけるミニステリアール層およびユダヤ人の調査が取り組まれた。調査研究は当該年度内の実地調査1回を含めて行われ、その成果は3回の口頭報告および論文集への寄与というかたちで公表された。
|