2009 Fiscal Year Annual Research Report
南都文化圏における霊験仏信仰とその造像に関する調査研究
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20720030
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Research Institution | Kanagawa prefectural Kanazawa bunko museum |
Principal Investigator |
瀬谷 貴之 Kanagawa prefectural Kanazawa bunko museum, 学芸員 (50443411)
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Keywords | 南都 / 霊験仏 / 運慶 / 東寺講堂 / 興福寺講堂 / 真言律宗 / 弥勒菩薩 / 愛染明王 |
Research Abstract |
南都文化圏における霊験仏信仰関係の作品や資料について、引き続き調査研究を行った。 平成21年度は計画のうち、特に鎌倉時代の南都と霊験仏信仰を考えるうえで重要な、仏師運慶の関連作品を中心に調査した。奈良・円成寺大日如来坐像、静岡・願成就院諸像、神奈川・浄楽寺諸像、愛知・滝山寺諸像、東大寺金剛力士立像などについて、現地調査も含めて検討した。その結果、運慶の造像活動において、東寺講堂大日如来像や興福寺講堂阿弥陀如来像などが、その規範となっていたことを確認した。この研究成果については平成22年度も継続して中心課題として扱い、運慶に関する展覧会などで、一般に向けても公表して行きたいと思う。なお、この運慶や慶派における霊験仏からの古典学習的要素を持つ作品として、神奈川・称名寺光明院・大威徳明王像、同・龍華寺大日如来坐像については調査を行い、その成果を雑誌論文・図書などで公表した。 また、叡尊による真言律宗(西大寺流)を中心とした中世律宗の関東における活動について、特にその信仰の中心的な位置を占めたと考えられている、弥勒菩薩と愛染明王の諸像について調査研究を行った。弥勒菩薩については、それが鎌倉時代後半に盛行した舎利信仰のうちでも、国難を救うとされた室生寺仏舎利と密接に関連して展開した可能性を、神奈川・称名寺光明院・弥勒菩薩坐像を中心に検討した。また愛染明王については、五島美術館像(鶴岡八幡宮旧蔵)が、源実朝が発願して運慶が製作したと考えられていた、鶴岡八幡宮北斗堂本尊であったことを明らかにした。そして、鶴岡人幡宮北斗堂本尊が、鎌倉時代後半に愛染明王信仰を鼓吹した真言律宗により取り込まれた可能性を提示した。この南都の影響を背景とする中世律宗の弥勒菩薩と愛染明王信仰の、関東での展開・活動については、京都国立博物館で行われた仏教美術研究上野記念財団助成研究会で発表した。
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Research Products
(3 results)