2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720031
|
Research Institution | Kyushu National Museum |
Principal Investigator |
金井 裕子 Kyushu National Museum, 学芸部企画課・文化交流展室, 研究員 (10443623)
|
Keywords | 土佐派 / 町絵師 / 粉本 / 平家物語 / 北野天神縁起 / 住吉派 |
Research Abstract |
従来、近世初期の日本絵画研究においては文字史料を重視した名品優先主義の傾向が強く、その結果、伝来や史料の残らない作品、無落款で様式史の確立しない作品は「町絵師」という言葉で片付けられ、粉本を使用した転写作品は二級品として扱われ、結果として膨大な作品群が研究対象から外れているのが現状である。本研究はこれらの作品群の資料的価値を積極的に認めるものである。具体的には、粉本の使用と絵師間の流通過程を検証する。流派の互いへの影響関係や接点、経済的支援者との関係を見直すことにより、当時の絵師をめぐる文化的ネットワークの存在が新たな角度から明らかになると考えられる。 2008年度では、本研究の中核を成す作品である「大原御幸図屏風」作品群のうち、未調査の国内外作品の調査研究を行った。またこれを補完する文字史料として、東京国立博物館所蔵『土佐家文書』と東京藝術大学付属図書館所蔵『住吉家鑑定控』を活用した。これら基礎史料の収集に併せ、粉本を利用し転写されたと思われる作品群の調査を行った。特に鎌倉時代に描かれた「北野天神縁起絵巻」(弘安本、京都・北野天満宮)、室町時代後期の「北野天神縁起絵巻」(文亀本、京都・北野天満宮)、江戸時代初期の「北野天神縁起絵巻」(元和本、福岡・太宰府天満宮)、江戸時代中期の「天満宮縁起」(鳥飼本、福岡・鳥飼八幡宮)の4作品について重点的に調査を行った。これらは時代を超えてほぼ同じ図様が忠実に継承された典型例の一つであり、その転写方法や経緯を探ることで、粉本の流通と図様継承について具体的な知見を得た。 なお以上の研究成果を報告するため、九州国立博物館特別展「国宝天神さま」に関連するシンポジウム「北野天神縁起絵巻」において発表を行っている。
|
Research Products
(4 results)