2008 Fiscal Year Annual Research Report
室町時代の仏教絵画を中心とする東アジアの宗教美術に関する調査研究
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20720032
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Research Institution | Kyushu National Museum |
Principal Investigator |
畑 靖紀 Kyushu National Museum, 学芸部文化財課資料管理室, 研究員 (80302066)
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Keywords | 室町時代 / 仏教絵画 / 東アジア / 宗教美術 / 足利将軍家 / 明兆 / 雪舟 / 観音図 |
Research Abstract |
従来、研究成果の非常に少ない室町時代の仏教絵画を主要な対象として基礎的なデータを収集して作品の歴史的な意義を考察し、それらを東アジアの宗教美術のなかに位置付けることを目的とする本調査研究では、足利将軍家が関与する寺院、特に禅宗おける造像を研究対象とした。その理由は公武関係や対外関係を尊重する同家が宗教政策上、禅宗を重視するため、この環境で時代を代表する仏教絵画が制作されたと考えるためである。本年度は東福寺で活躍した画僧・明兆(1352-1431)の現存作例に注目し、特に足利義持の関与が想定される三十三観音図(東福寺)を考察の対象とした。 まず本図の図像について典拠とされる『出相観音経』洪武28年(1395)版を検討し、さらに雪舟筆観音図(個人蔵ほか)や鶴洲筆木庵性〓(トウ)・高泉性〓(トン)・千呆性〓(アン)賛観音変相図(東京国立博物館)、朝鮮仏画の観音三十二応現図(知恩院)と比較をすることを通じて、その図像および表現の特質について具体的な知見を得た。 また本図の造像目的について同時代の足利将軍家をめぐる状況を文献から検討し、加えて雪舟筆観音図(個人蔵ほか)や観音三十二応現図(知恩院)に関する先行研究なども参照しながら、信仰の側面から作品を理解するための基礎的な資料を収集した。 なお以上の研究成果を公開するため、上記作品のうち数件を含む仏教絵画を、申請者が企画担当した九州国立博物館文化交流展示トピック展示「変化する観音」において展示した。
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