2009 Fiscal Year Annual Research Report
一九二〇、三〇年代日本の西洋音楽のレパートリー形成とメディアに関する実証研究
Project/Area Number |
20720042
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Research Institution | Toho College of Music |
Principal Investigator |
井上 登喜子 Toho College of Music, 東邦音楽大学・音楽学部, 専任講師 (90361815)
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Keywords | 音楽学 / 実証的音楽学 / 洋楽受容 / メディア / レパートリー研究 |
Research Abstract |
本研究は1920年代、1930年代の日本における西洋音楽のレパートリー形成とメディアの関係に関する実証研究である。本研究の目的は、第一に、東京および複数の地方都市の洋楽演奏団体の演奏会に注目し、演奏レパートリー・データの収集とデータベース作成を通して、当該期間における全国レベルでのレパートリーの形成の実態と時代的推移を定量的に把握すること、第二に、こうしたレパートリー形成の変動の要因を、データに基づく実証分析の手法によって明らかにすることにある。レパートリー形成に関わる要因としては、都市(地理的位置)、時代、団体の成熟度や性格、個人(選曲に影響力をもつ指揮者)、メディア等が挙げられるが、なかでも1920年代から1930年代にかけて全国で浸透していった新聞雑誌、ラジオ、国産レコード等のメディアによる情報伝達は各地の演奏団体の選曲やレパートリー形成に大きく関与したと考えられる。本研究では全国に設立された複数の学生オーケストラによる1941年までの演奏会(計405回)、ならびにそこで演奏された管弦楽レパートリー(のべ数1,560)をサンプルとして、西洋音楽の受容過程の一端を検証する。 平成21年度の研究の結果、1920年代、1930年代の学生オーケストラの演奏会における曲目選択が、個別曲レベルではレパートリー形成の様々な背景を持ちつつ、全体としてみると、音楽雑誌や国産レコードといったマス・メディアとの強い関連を持っていたこと、その影響は1926/1927年を境に音楽雑誌から国産レコードへと移行したことが明らかになった。この結果は、新聞雑誌に代表される「紙メディア」中心の時代から、ラジオ放送(1925年開始)や国産洋楽レコード(1927年発売)等の新しいメディアの登場という、大正から昭和初期にかけての情報伝達の変化の影響を明確に示しており、当時のアマチュア・オーケストラのレパートリー形成へのメディアの影響を、データと仮説検定をもって示した初めての実証研究である。
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Research Products
(1 results)