2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代都市と天使絵図の諸相:1920ー30年代ドイツにおける、精神史としての絵画史
Project/Area Number |
20720053
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
松友 知香子 九州産業大学, 美術館, 学芸員 (50462289)
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Keywords | 芸術学 / 表象文化論 / 都市 / 天使 / ドイツ:日本 |
Research Abstract |
平成22年度は、造形芸術における「都市」と「天使」をめぐる新しい関係性について、近代ドイツの芸術潮流の一つ、ロマン主義の絵画にさかのぼる調査を行った。具体的には、フィリップ・オットー・ルンゲ(1777-1810)を中心とする、18世紀後半から19世紀前半の芸術動向の渉猟であり、そこから幾つかのヒントを抽出した。 2010年はルンゲ没後200年という記念すべき年であり、ルンゲの作品を多数所蔵するハンブルク美術館(Kunsthalle Hamburg)で、大規模な回顧展が行われた。同地でルンゲの初期作品から晩年の代表作までを俯瞰する機会を得て、本研究の全体を貫くヒントを得ることができた。 具体的には、ルンゲの代表作品『朝の時』『昼の時』『夕べの時』『夜の時』における「天使」と「子ども」の造形的な類似性と象徴的な配置である。当時の社会思想やルンゲの造形論に鑑みるなら、「天使」と「子ども」が併置されていることは、両者の融合への一歩として考えることができる。こういった思想が、後世のバルラハやクレーの天使像において、天使の人間化とも言うべき造形を生み出す先駆になったと推測される。この研究成果については、現在執筆中であり、平成23年度には関連する学会で発表したい。 他方で現代都市の「天使」を考えるために、バルラッハの「天使」像を、ギュストローとケルンのそれぞれの教会で見学し、またベルリンの<トランス・メディアーレ>展で、天使像につながるメディア・アート作品を取り上げ、その存在論的な意味をさぐる研究発表を行った。
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Research Products
(2 results)