2008 Fiscal Year Annual Research Report
「報知新聞」にみる野村胡堂の文学観-報知新聞記者から『銭形平次捕物控』の作者へ-
Project/Area Number |
20720058
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
谷口 幸代 Nagoya City University, 大学院・人間文化研究科, 准教授 (50326162)
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Keywords | 野村胡堂 / 報知新聞 / 新聞小説 / メディア / 文学観 |
Research Abstract |
本研究は野村胡堂と「報知新聞」との関わりの内実を明らかにすることを目的とする。明治45年に報知社に入った胡堂は、小説家として活躍し始めてからも同社に在籍し、その期間は30年以上にわたる。この間、同新聞の記事の執筆、新聞小説の企画などの編集作業、自らが新聞小説を書く創作、さらには報知新聞以外の複数の媒体への作品発表と多様な活動を行っている。本研究はこのような胡堂の特殊性に着目し、報知記者時代の胡堂の実像を浮き彫りにし、記者としての体験が作家胡堂の誕生と展開にいかに作用したのかを考察する。 初年度となる平成20年度は、まず大正期にしぼって「報知新聞」の紙面を調査した。明治45年に入社した胡堂が社会部長、学芸部長を歴任し、記者として本格的な活躍を始めた時期である。 「胡堂」の筆名で発表した科学小説『二万年前』や「あらえびす」の筆名で発表した音楽評論『音楽漫談ユモレスク』等の内容を検討すると共に、これらが実際にどのような紙面に掲載されたのかを確かめ、同新聞の文芸欄拡張路線と連動するのではないかとの仮説を得た。 またこの時期に文芸欄拡張の柱となった新聞小説をリストアップし、書き手や内容の傾向も併せて調査した。それによって胡堂が「報知新聞」の読者の好みをどのようなものとして把握していたのか、新聞小説とはどのようなものであるべきだと考えていたのか、文学における通俗性や大衆性をどうとらえていたのか、といった新聞小説をめぐる胡堂の文学観を明らかにし、併せて胡堂が自ら筆をとった作品にどう作用するのかを検討する資料とした。
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