2010 Fiscal Year Annual Research Report
新聞・雑誌メディアにおけるジェンダー編成と小説――大正・昭和の言語態分析
Project/Area Number |
20720059
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
内藤 千珠子 大妻女子大学, 文学部, 講師 (20433708)
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Keywords | 文学一般 / ジェンダー / メディア |
Research Abstract |
新聞・雑誌メディアにおけるジェンダー編成と、小説の言語におけるジェンダーの構造の相関に焦点をあて、大正・昭和の言説構造を分析・考察しようとするのが本研究の目的である。近代日本が国民国家として成立し、戦争や植民地主義の論理が定着してゆく過程で生じた言説の論理構造について、ジェンダー編成に注目しつつ、言語態分析の方法論をとって研究を進めた。 大妻女子大学図書館、国立国会図書館、国文学研究資料館などを利用し、大正・昭和期の新聞・雑誌の言説を資料対象として収集するとともに、復刻された大正・昭和期の刊行物を購入・収集した。本年度は、とりわけ近代天皇制とジェンダーという観点を主要な考察対象にしつつ、大正・昭和期の言説に見られる論理が、現代の文学状況にどのようなかたちで再現しているのか調査した。その成果をまとめ、社会文学会で「物語の殺意-天皇制が織りなすジェンダー表象」という題目で学会発表を行った。さらに精査した後、「大逆事件と百年後の小説-瀬戸内寂聴「風景」を中心に」というタイトルで論文化した。学会発表と論文のなかでは、具体的な問題として、明治末期のメディア言説においてイメージ化された大逆事件の物語構造が、大正・昭和期のメディアのなかで、天皇制とジェンダーの物語として再生産されたこと、そして現代にあってはそれらの物語が小説を媒介にして、ジェンダーの非対称性を強化するかたちで表象されていることを明らかにした。 また、雑誌「メカデミア」に、現代の女性作家が天皇制と女性表象をどのように作品化しているか議論した論考を発表し、さらに、大正・昭和期に編成されたジェンダー構図と現代文学との関係を視野に収め、この間執筆してきた論考に大幅な加筆・修正を加え、『小説の恋愛感触』と題し、一冊の図書としてまとめた。
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